緩和ケアで大切にしたいQOL|一般社団法人日本終末期ケア協会

緩和ケアで大切にしたいQOL

2023.8.23 JTCAゼミ

目次

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緩和ケアと終末期ケアの定義とは?

緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者様とそのご家族に対して、痛みやその他の身体的問題、心理的問題、社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に発見し、的確なアセスメントと対処を行うことによって、苦しみを予防し、和らげることで、QOLを改善するアプローチである、とされています。

【緩和ケアの定義[ WHO(世界保健機関)の緩和ケアの定義 2002年 ]より】

緩和ケア(Palliative Care)と終末期ケア(End-of-Life Care)は、両方とも重病や末期疾患を抱える患者のケアに関連していますが、異なるアプローチや目標があります。

緩和ケアは、重病や末期疾患による症状や苦痛を軽減し、患者の生活の質を改善することを目指します。

これは、疾患の進行を遅らせる治療や根治を追求するのではなく、患者の心身の苦痛を和らげることに焦点を当てています。

緩和ケアは、症状管理、痛みの緩和、心理的・社会的なサポート、家族のケアなどを含みます。
また、疾患の初期段階から提供される場合もあります。

一方、終末期ケアは、人が亡くなる直前の期間に焦点を当てたケアです。
患者や家族が望むケアの形態を提供し、快適な環境で最期の時間を過ごすことを支援します。

これには、症状管理、痛みの緩和、心理的なサポート、家族のサポート、霊的なケアなどが含まれます。
終末期ケアは、通常、病院やホスピスなどの専門施設で提供されます。

要するに、緩和ケアは疾患の初期段階から提供され、症状の緩和と生活の質の向上を目指すケアです。

終末期ケアは、患者が亡くなる直前の期間に提供され、患者と家族が望むケアを提供し、最期の時間を快適に過ごす支援をします。

両方のケアは、患者の心身の苦痛を軽減し、心理的・社会的なサポートを提供することに焦点を当てていますが、時間的な焦点や提供される場所が異なります。

終末期のQOL向上に必要な5つの要素

QOLとは「Quality of Life(生活の質)」の略称です。
また、人の生活の満足度や充実度を表す指標です。


一般的には、生活の質は物質的な要素だけでなく、身体的、精神的、社会的な側面にも影響を与える要素を含みます。

QOLの評価には、さまざまな要素が考慮されます。

物理的な健康や生活の安全性、経済的な安定、教育や雇用の機会、社会的な関係やサポートの有無、自己実現や個人の幸福感などが含まれます。

これらの要素は、人々の幸福や生活の満足度に密接に関連しているため、一律にこうすれば誰もが幸福感や満足感を満たすことができる、という基準はありません。

個人の生きてきた環境、職業、宗教、家族構成など個人個人での価値観は異なるため、その人にとっての満足度にはかなりの個人差があります。

QOLを向上させる事は、個人や社会全体の福祉を追求するために重要な目標です。
政府や地域社会、国際機関などが、QOL向上のための政策や取り組みを行っています。

これには、医療・保健の改善、教育の普及、環境の保護、社会的な平等の促進などが含まれます。
QOLは主観的な要素も含んでおり、人々の価値観や文化、個人の状況や目標によっても異なる場合があります。

したがって、QOLの評価は一概にはできず、多角的な視点が必要です。

終末期の人のQOL向上では、その人が最期を迎えるまでの日々をできる限り穏やかで快適に過ごすことを目指します。

終末期の人々は、深刻な病気や末期の状態に直面しているため、身体的な苦痛や心理的なストレスが増加する可能性があります。

そのため、その人のQOLを向上させるために、次のような要素が重要です。

1. 痛み管理

終末期の人々はしばしば痛みに苦しむことがあります。
痛みの適切な管理は、QOLを向上させるために欠かせません。
医療チームは、効果的な痛み管理計画を立て、適切な薬物療法や代替療法を提供することが重要です。

2. 快適な環境

終末期の人々は自宅やホスピス、病院など、自分が快適と感じる場所で過ごすことが重要です。
快適なベッドや寝具、適切な温度、音楽や風景など、好みに合わせた環境が整えられることが望ましいです。

3. サポートと情報提供

終末期の人々は、患者様自身や家族が持つ情報やサポートにアクセスできることが重要です。
医療チームや介護チームは、患者や周囲の人達とコミュニケーションを取り、その人の希望やニーズを理解し、必要な情報やサポートを提供することが重要です。

4. 心理的な支援

終末期の人々は、不安や恐怖、悲しみなど、さまざまな感情を経験することがあります。
心理的なサポートやカウンセリングを提供することで、心の健康と精神的な幸福感を促進することが重要です。

5. 人間関係と社会的なつながり

終末期の患者様には、家族や友人、信仰共同体などの支持的な人々との絆が重要です。
身の回りの人々との交流や意味のある関係を築くことは、QOLを向上させることにつながります。

終末期の人のQOLは、個人の希望や価値観に応じて異なる要素が含まれる場合もあります。
重要なのは、個々の状況に合わせて最適なサポートとケアが提供されることです。

医療チームやケアチームは、終末期の患者様が尊厳を持って最期の時を過ごせるように支援する役割を果たすことが求められます。

緩和ケアで大切にしたいQOL

終末期の疾患や病気によって引き起こされる痛みは、患者様にとって非常につらいものです。
痛みの緩和は、苦痛を和らげ、快適な状態を維持するために非常に重要です。

終末期の痛みを緩和して、QOLを大切にしていくことは、末期的な疾患や病気に苦しむ患者に対して提供される緩和ケアの基本的な目標です。

終末期の痛みを緩和するには、医師や看護師、緩和ケアの専門家が痛みの原因を評価し、適切な鎮痛剤や痛み管理のアプローチを提供します。

このようなアプローチには、薬物療法、神経ブロック、物理療法、心理的支援などが含まれる場合があります。

患者様の痛みを最小限に抑えることは、穏やかな終末期を過ごすことにつながります。

また、終末期の患者様にとって、残された時間を出来るだけ充実させ、生活の質を高めることは重要です。
これには、身体的な快適さだけでなく、心理的、社会的、霊的な側面も含まれます。

終末期の病気や疾患によって制約されるかもしれない活動や関係性の中で、患者ができる限り満足感を得られるようサポートすることが目指されます。

これには、家族や友人との時間を大切にすること、個別のニーズや希望に対応すること、心理的なサポートやカウンセリングを提供することが含まれます。

また、宗教的な信念や霊的なニーズに対しても配慮することが大切です。

 終末期の痛みを緩和しながらQOLを大切にしていくためには、その人が最も穏やかで快適な状態で過ごせるよう、医療・介護チーム、家族や周囲の人々、患者様自身が協力することが重要です。

最期の時期だけでなく、緩和ケア期から死へ向かってネガティブな気持ちでずっと落ち込んでいるだけでは、せっかくの残された貴重な時間がもったいないです。

無理をしない範囲で、体調が良い時にはこれをしよう、誰と過ごそう、どこへ行こうなど、したい事、心地よい事を考え、それを周りの人達や医療者や介護者がそれらを実現出来るようにサポートして行きたいですね。

何も、大きな目標を掲げなくても、心地よい場所で過ごす、というだけでも良いのです。

そして必ずやってくる最期には本人、家族、周囲の人も心の準備をしながらも、その日までを心地良く過ごせるかどうか、それを残された人達が後から振り返って、良かったと思えるか、本人が満足出来たかどうかは想像するしかありませんが、最期までQOLを大切にしたケアは、精一杯その人が生きてきた命に敬意を払う事に繋がるのだと思います。

 

【終末期ケア専門士】について

「終末期ケア」はもっと自由になれる|日本終末期ケア協会

終末期ケアを継続して学ぶ場は決して多くありません。

これからは医療・介護・多分野で『最後まで生きる』を支援する取り組みが必要です。

時代によって変化していく終末期ケア。その中で、変わるものと変わらないもの。終末期ケアにこそ、継続した学びが不可欠です。

 

「終末期ケア専門士」は臨床ケアにおけるスペシャリストです。

エビデンスに基づいた終末期ケアを学び、全人的ケアの担い手として、臨床での活躍が期待される専門士を目指します。

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