在宅での看取りと病院での看取り

2023.7.12 JTCAゼミ

目次

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はじめに

どんな人でも母親から生まれて、いずれは最期がやって来るのは自然の摂理です。

死に対する考え方は文化や宗教、個人の経験や価値観など、様々な要素に影響を受ける為、人それぞれ大きく異なります。

死は悲しみや喪失感を感じるものではあるけれど、今まで長年育んできた、生命の限られた残りの時間を大切にし、人生の意味や目的について考えるきっかけともなります。

看取りとは、病気や高齢のために最期を迎える人に対して、延命治療などを行わずに、人生の最期まで尊厳ある生活を周りがケアして見守ることです。

家・病院・施設、どれも大事な場所

厚生労働省の「人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会」が2017年末に実施した調査では、国民の63.5%が「自宅で最期を迎えたい」と希望しています。

しかし、2020年の死亡者のうち在宅死できた人の割合は15.7%で、68.3%は病院で亡くなっています。

ただし、地域差があり、地域によっては在宅での死亡率が高い場合もあります。

高齢化が進んでいる日本の社会で、身近に起こりうる、いずれ来る死を避けては通れません。

自宅で最期を迎えたいという人は増えていますが、在宅で最期を過ごす事を諦めてしまうという事も少なくありません。

その理由には、独居で何か起こった時に助けてくれる人がいない、同居している家族に迷惑をかけたくない、慣れない医療処置を家族に習得してもらわなければならない、などがあります。

特に、排泄や入浴、更衣、食事、清潔のケアなどの日常生活動作を自己では行えなくなった時に、生活全般に関わる全ての事を家族に負担をかけてしまうという思いを持つ方が多いです。

病院の療養型病棟、緩和ケア病棟や施設で医療者や介護者などのプロにケアを委ねて最期まで過ごす、という選択肢ももちろんあります。

一概に、病院での看取りと在宅での看取りのどちらが良いとは言えませんし、それぞれの人に合わせてニーズや価値観も違います。

病院にいれば、医師や看護師、栄養士、薬剤師、理学療法士などから専門的な医療を受けられ、ナースコールを押せば医療スタッフがすぐ来てくれ、体調管理、薬の管理、医療処置や介護全般を任せられます。

そして、急変時にも迅速に対応する事が出来ます。

緩和ケア病棟では延命するための治療は出来ないものの、本人の苦痛を最大限減らして最期を迎える事ができ、本人や家族の負担を大幅に軽減出来るという利点があります。

介護施設では病院ほどの専門的な医療は受けられませんが、介護福祉士、ヘルパーなどの介護スタッフによって十分なケアを受けられ、病院にいる時と同様に、本人や家族の負担軽減が出来ます。

ただ、コロナ禍では病院に入院したり施設に入所した時に、多くの場合、感染症の拡散を防ぐために、面会に関しての規制が厳しく、面会出来なかったり制限されてしまい、会いたい人に会えない寂しい最期となってしまう事例も多々ありました。

逆に在宅で最期を迎えるなら、本人が慣れ親しんだ、快適なくつろげる自宅で、自身が思うように過ごせます。

家族がいる人なら、家族や親しい人達が側にいてあげる事ができる事で孤独感を感じにくく、病院での入院よりも費用が抑えられます。

また、自宅で過ごせる事で、必要最低限ではあるものの、希望に沿った治療やケアを行え、本人の意思を尊重することが出来る、という利点があります。

ただし、その場合には家族や、身近な人達の看護・介護負担が大きくなる場合があります。

負担軽減のためには、医師、看護医療スタッフ・介護スタッフなどの専門家が自宅に訪問してケアを行い、適切な医療や看護、介護など専門的な助言のもと、家族や本人の意向を踏まえて一緒に方向性を決めて、十分なケアを受ける事が必要となります。

終末期を取り巻く介護保険制度

日本では介護保険制度が2000年4月に施行されました。

この制度は、高齢者に対する介護を必要とする方に適切なサービスを受けられるようにサポートする保険制度です。

介護を必要とする方に費用を給付し、適切なサービスを受けられるようにサポートする保険制度です。

自立支援や、介護する家族の負担軽減を目的としています。

この制度のおかげで、要介護認定または要支援認定の結果が出た後に介護サービスを受けられるようになりました。

この制度で、被保険者となるのは、65歳以上の方(第1号被保険者)と、40〜64歳までの医療保険加入者(第2号被保険者)に分類されます。

第1号被保険者は要支援認定または要介護認定を受けたときに、第2号被保険者は加齢に伴う特定疾患(以下16種類)が原因で介護認定を受けた時に介護サービスを受ける事が出来ます。

・初老期における認知症
・慢性閉塞性肺疾患
・脳血管疾患
・変形性関節症(両側の膝関節症または股関節に著しい変形を伴うもの) 
・筋萎縮性側索硬化症
・関節リウマチ
・パーキンソン病関連疾患
・後縦靱帯骨化症
・脊髄小脳変性症
・脊柱管狭窄症
・多系統萎縮症
・骨折を伴う骨粗鬆症
・糖尿病の合併症(腎症、網膜症、神経障害)
・早老症
・閉塞性動脈硬化症
・がん末期

通常、介護保険を申請してから介護認定調査員が調査して、それをまとめた介護認定調査書と主治医が記入した主治医意見書の書類をもとに要介護認定が下りるのに約1ヶ月前後はかかります。

しかし、末期癌の場合には申請の際に直接在住の役所でその旨を伝えれば、迅速に対応してくれる事も可能です。

心身の状況に応じて、迅速にケアマネジャーにより暫定のケアプランを作成する事、迅速に要介護認定を実施する事、入院していた場合には、入院中からの介護サービスと医療機関とが連携する事、主治医意見書の診断名欄へ「末期がん」の明示をする事、介護保険の認定が出た場合に区分変更申請が出来る事をお伝えし、適切なサービスを提供出来ることを、私たちケアをする人間は知っておく必要があります。

ニーズで考える、最期を過ごす場所

介護事業が進んできており、在宅では介護の計画を立てるケアマネジャー、日常の生活援助または身体介護をする訪問介護、看護師が訪問して医療サービスを提供する訪問看護、かかりつけ医が在宅に訪問してくれる訪問診療、自宅に組み立て式の浴槽を持ち運んで実際に入浴・シャワー浴・洗髪も出来る訪問入浴、福祉用具貸与・購入・介護に必要な改修工事の補助など、在宅にいながら受けられる様々なサービスが増えてきました。

それらをうまく活用しながら、ターミナル期の急性増悪などにより頻回訪問看護が必要な場合、主治医に特別訪問看護指示書を書いてもらい、医療保険、介護保険の両方を併用して、最期の時期を在宅で過ごすという事も可能です。

昔は自宅で最期を過ごすしか選択肢がなかったけれど、医療が発達して、プロの手を借りられる方法が増えてきました。

最期までの時間をどう過ごしたいか、誰と、どこにいたいかなど、本人や家族の意向を踏まえて病院の病棟・緩和ケア病棟・施設・または在宅というように、様々な選択肢があります。

色々な家庭背景がある中、医療を受けられる病院なのか、自宅でその人その人に合った、オーダーメイドのサービスを受ける事で、その人らしい最期を迎える準備が出来るのではないでしょうか。

私たちケアする側の人間は、最期は誰にでも訪れる、避けては通れない時を、本人の希望と家族の意見をしっかりと汲み取り、本人の意思を尊重して、その人が望むケアをその人が望む場所で行って、寄り添っていくことが大切ですね。