【JTCAセミナー】がん緩和ケアを心不全緩和ケアに活かす|一般社団法人日本終末期ケア協会

【JTCAセミナー】がん緩和ケアを心不全緩和ケアに活かす

2022.9.9 イベント

目次

2022年8月4日

 

日本終末期ケア協会は、
終末期ケア専門士約200名を
対象にYouTubeを使用した
オンライン上で
「第15回JTCAセミナー」
を開催しました。

 

講師としてお招きしたのは、
東北大学大学院医学系研究科
緩和医療学分野
田上 恵太先生!

 

テーマは、
『がん緩和ケアを心不全緩和ケアに活かす』
です。

 

 

セミナーの流れは、以下の通りです。

  • 前半の講義 (約25分)
  • 後半の講義 (約25分)
  • 質疑応答  (約30分)

 

講義の一部を簡単にまとめてご紹介いたします!

 

がん緩和ケアをどう活かすの?

心不全の患者さんは、がんの患者さん以上に
緩和ケアに移行した際に
すでにADLが落ちているケースが多いです。

なのでより早期に、外来・地域医療から
アドバンスケアプランニング(ACP)を
行う必要があります。

 

それでは、この時点での
緩和ケアが介入する意義をご紹介します。

 

▪数多くのアドバンスケアプランニングを行ってきた経験
予後が限られ、週単位で体調が変化するがん患者本人・家族との意思決定に活かせる

 

▪療養場所の意思決定
社会福祉施設や訪問診療など地域医療・福祉の情報が提供できる

 

▪在宅緩和ケアの経験
家で「最期まで生きるため」の方法を知っている

 

予め対話をしながら過ごし方を考えていくと、
重症度が進んでいった際でも
信頼関係が良い状態で繰り返し
ACPを行うことができます。

 

 

モルヒネを使用しないほうがいい?

ここで、症状緩和で使用される
モルヒネを推奨しない状況
4つご紹介します。

 

▪腎機能障害があるとき(eGFR<50で要注意)

代謝物は全て腎排泄なので、中枢神経毒性(ミオクローヌス・せん妄・眠気・悪心など)の原因となる

 

▪せん妄、せん妄ハイリスク、精神運動興奮があるとき

脳神経を興奮状態にする・覚醒に働き、睡眠の質を低下させる

 

▪呼吸抑制があるとき

腎機能障害時は、さらに代謝物による抑制もある

 

▪0.5~1.0mgのフラッシュを2~3回施行しても眠気しかでないとき

モルヒネ以外の薬も共通だが、効かない薬は使わない。眠れないときはモルヒネではなく、きちんと眠るための薬を使う

 

終末期はとりあえずモルヒネを使う、のではなく
特有の症状の知識をスタッフと共有して
状態に応じた症状緩和の目標を定めることが
大切ですね。

 

 

質疑応答

 

講義終了後には、質疑応答の時間を設けています。

 

今回のJTCAセミナーでは、
慢性疾患看護専門看護師の三橋啓太様
サポート頂きました。

 

——-

患者さんを見ているとセレネースのみは効果が弱いイメージがあります。レペタン+セレネースは経験がないのですが効き目はいかかでしょうか?

——-
の質問には

——-

呼吸困難が和らぎ、それと共に少しウトウトして穏やかに休められる患者さんが多いですね

——-

というご返答をいただきました。

 

ここで、終末期ケア専門士の皆様から寄せられた
心不全や在宅における緩和ケアで活かしたい!
と思ったことを一部ご紹介します。

 

・ACPの重要性について、徐々に悪化していく病態であり、受容していけるように、段階を経て丁寧に説明していく事

 

・呼吸困難や痛みに対するオピオイドは、モルヒネ以外も十分選択肢に入ること

 

・シャンプーや汗拭きシートなど、患者様に取って気持ちが良いものを使用する事で、一瞬でも患者様がリラックス、快適な時間をとれるような工夫を臨床現場でもっと使えたら良いなと思います。

 

・基本の事ですが、元々の原疾患を立ち戻って考えるといいことや、先生が話されていたメンソール系のものを利用すること、などぜひ参考にさせていただきたいな、と思いました!

 

おわりに

いかがだったでしょうか。

 

受講後のアンケートでは、

・心不全についても、見通しをあらかじめ伝えて患者さんが受け止められるようにすること、簡単なようでとっても難しいとは思いますが、心がけて行きたいと思います。

 

・緩和ケアの中で心不全患者さんへの麻薬の使用についての理解ができていなかったのですが、そういう理由でモルヒネを使わないのか!っということを理解することができました。

 

・心不全は病態管理が難しく、主治医の治療方針に沿うことが主でアプローチを含め相談しにくいと苦手意識が強かったです。先生の講義を聞いて、薬物療法よりもケアで症状緩和できることが多いと聞いて、前向きに頑張りたいと思えました。

 

・貴重な講義を聞けて良かったです。

モルヒネは、睡眠の質を下げるとか、緩和に関しての、薬剤の知識など得ることができました。

といった感想をいただきました。

 

 

日本終末期ケア協会では、
講義形式はもちろんのこと、参加した人が
自分の思いや悩みを話すことで、
明日へのヒントを得られるような
イベントを開催しています。

 

今後もさまざまな角度や方法で
学びの体験を作っていきたいと思いますので
終末期ケア専門士の皆様の
ご参加をお待ちしております。

 

【終末期ケア専門士】について

「終末期ケア」はもっと自由になれる|日本終末期ケア協会

終末期ケアを継続して学ぶ場は決して多くありません。

これからは医療・介護・多分野で『最後まで生きる』を支援する取り組みが必要です。

時代によって変化していく終末期ケア。その中で、変わるものと変わらないもの。終末期ケアにこそ、継続した学びが不可欠です。

 

「終末期ケア専門士」は臨床ケアにおけるスペシャリストです。

エビデンスに基づいた終末期ケアを学び、全人的ケアの担い手として、臨床での活躍が期待される専門士を目指します。

終末期ケア、緩和ケアのスキルアップを考えている方は、ぜひ受験をご検討ください。