腎不全の終末期に寄り添うとは【学びLabo】|一般社団法人日本終末期ケア協会

腎不全の終末期に寄り添うとは【学びLabo】

2024.4.30 イベント

目次

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2024年2月29日、学びLabo 「透析のプロに聞きたい!腎不全の終末期に寄り添うとは」を開催しました。

今回は「透析のプロに聞きたい!」シリーズの第2弾ということで、前回に引き続き再び、小柴先生にご登壇いただきました。
前回のセミナーのアンケートにお答えするという形で、準備をしてくださいました。

講師

医療法人社団 一陽会 服部病院 透析看護認定看護師

小柴 隆史 先生

腎不全における終末期の患者さんや家族が、治療法選択(RRT)を行うときの意思決定支援や、保存的腎臓療法(CKM)を選択するということについて、様々な事例を通して考えていきました。

家族の希望が本人の意思の代弁であるとは限らない

前半の講義では、以下について講義していただきました。

抑制の必要な認知機能障害があっても、それは人生の最終段階ではない

意思決定が困難な患者さんの場合は、家族間とのコミュニケーションを十分に図る

家族の希望が本人の意思の代弁であるとは限らないことに十分留意し、ACPプロセスが重要である

透析治療を行うときは、認知症の患者さんが不安になる要素がたくさん詰まっています。
「ベッド上で長時間安静にする必要がある」「穿刺の痛みに耐えなければならない」など、様々な不安をあおる要素によってBPSDが悪化することもあります。

まずは十分に患者さんのフィジカルアセスメントを行い、不快感を取り除くこと、持てる力を引き出すこと、家族の協力や社会資源を活用することが大切です。
患者さんの行動の意味を読み取ることが、BPSDのケアにつながります。

また、本人の意思が明確でない場合には、家族の意見がそのまま本人の意見と同じとは限りません。
透析を見合わせる状態と、生命倫理を踏まえながら考えていく必要がありますが、やはり自分で意思を表示できるときに意思決定について話す機会を設けることの大切さを感じました。

意思決定のゆらぎを捉えるには

後半の講義では、以下について講義していただきました。

患者と何度も対話を重ね、医療職種者が自ら最善と思う選択肢を推奨し、共感性と謙虚さを持って対応する

患者がCKMを選択したときは、透析治療をしないと思った何らかの理由を、対話を重ねることによって明らかにしていく

患者さんもご家族も、刻々と体の状況が変化すれば、意思決定のゆらぎが生じることは当たり前と考えます。

患者さんと家族が十分に理解できる情報を提供した上で、医療職者とともに考えていくこと、患者の物語に思いを致すこと、どんなゆらぎがあっても必ず最後まで支援するということが、腎不全看護の大切さと痛感したセミナーでした。

私達はケアを行うときに、倫理的ジレンマを感じる場面に出会うことがしばしばあります。
そのジレンマに向き合い、生命倫理の原理を踏まえ、何度も患者とその家族、医療従事者で話し合うことを重ねながら、相手に謙虚さを持って意思決定支援を行っていく必要があります。

また、CKMを希望されたときは、患者さんと対話を重ねることで、その理由と真実を知ることが大切だと学ぶことができました。

参加した皆さまの感想

Aさん

透析に限らず、本音を話していただくための人間関係の構築や、適切なタイミングでの情報提供、家族をはじめとした周囲の環境の確認など、最期の満足度を高めて後悔を減らすための行動について考えることができました。

Bさん

患者様の状態によって気分や思いが常に揺れ動く、なるほどなと思いました。
これからは患者様やご家族様に寄り添って、いい意思決定支援が出来るように頑張ります。
今日の講義を職場のスタッフと共有したいと思います。

Cさん

透析も生きるために必要な医療で、中止をすることで死に直結する事は誰しもわかっているからこそ、患者・家族との関わりが難しい。
麻痺があるわけでも無し、寝たきりな訳でもない透析患者さんには、簡単に治療について説明した・同意したで解決できないところが本当に難しいと講義を聞いて実感しました。

 

【終末期ケア専門士】について

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終末期ケアを継続して学ぶ場は決して多くありません。

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時代によって変化していく終末期ケア。その中で、変わるものと変わらないもの。終末期ケアにこそ、継続した学びが不可欠です。

 

「終末期ケア専門士」は臨床ケアにおけるスペシャリストです。

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終末期ケア、緩和ケアのスキルアップを考えている方は、ぜひ受験をご検討ください。

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