感情労働と看護師 ~看護師にもメンタルヘルスケアを~
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感情労働とは
「感情労働」はアメリカの社会学者A・R・ホックシールドによって「公的に観察可能な表現と身体的表現を作るために行う感情の管理」と定義されており、自分の感情をコントロールしながら、相手に不満を感じさせないポジティブな働きかけをするものとされています。
また、自分の感情を誘発、または抑圧することが求められ、精神と感情の協調が必要な労働です。
感情労働には、【表層演技】と【深層演技】があります。
表層演技
その時の状況で実際に抱いた感情を抑圧、あるいは別の感情を抱いているかのように振る舞うことによって外面的に望ましい感情表出を行うことです。
例えば作り笑顔がそれにあたります。
深層演技
状況や社会的・職業的に望ましいとされる感情をあたかも心の底から感じているように、自己の感情を誘発することをいいます。
つまり、そう見えるように振る舞うのではなく、自分自身の中から自分で呼び起こした感情を自発的に表出する事です。
例えば、結婚式場のスタッフが祝福の気持ちを持って出席者に対応するなどがこれにあたります。
感情労働にあたる職業例
・医師や看護師
・介護士
・保育士
・教師
・客室乗務員
上記のように対象が人である職業が多いですが、直接人と対面しない職業も含まれます。
看護師が抱えるストレス
看護師の仕事は、肉体労働・頭脳労働・感情労働のすべてが必要とされます。
看護師の笑顔や、優しい声掛けなどは患者さんや家族に安心感と信頼感を与え、その後の良好な人間関係の構築に重要な影響を与えます。
しかし、いつも笑顔ではいられませんよね。
時には頑張って笑顔を作り、自分の感情を抑圧することもあるではないでしょうか。
また、医師など他職種と看護師の間にも感情労働が存在していることもあります。
看護師は、多くの業務に追われながら患者さんのケアとアセスメント、家族ケア、多職種との連携など、頑張りすぎて心身が消耗している人も少なくありません。
これらのことから、看護師は、感情労働にあたる職種の中でもバーンアウト(燃え尽き症候群)に陥りやすい職種の1つといえるでしょう。
バーンアウトを防ぐメンタルヘルスケア
バーンアウト(燃え尽き症候群)は、ある時突然意欲を失ってしまい、その物事に取り組むことが出来なくなるなど、心身が消耗した状態です。
バーンアウトの3つの症状
①情緒的消耗感
・心の疲れを反映した症状
・「やる気が出ない」という状態
②脱人格化
・わけもなくイライラする
・周囲への配慮が出来なくなる状態
③個人的達成感の低下
・情緒的消耗感や脱人格化を起こしたまま取り組むことによる、突然のパフォーマンス低下
・周囲からの評価の低下
・「自分はだめだ」などの自己否定感 ・うつ病の発症リスク
メンタルヘルスケアの種類
①セルフケア
・自分自身で行うケア
②ラインによるケア
・上司など管理監督者が行うケア
③事業場内産業保健スタッフなどによるケア
・産業医や保健師、人事労災管理スタッフなどが行うケア
④事業場外資源によるケア
・職場以外の専門的な機関や専門家によるケア
※今回は、セルフケアについてお話ししていますが、その他にも上記の3つがあります。
バーンアウトに陥らないための4つのポイント
①完璧を目指さない
②オンとオフを切り替え、メリハリをつける
プライベートの時間を意識的に確保しましょう
③意識して休息をとる
やりがいを感じているときは、つい無理をしがちになりますが、週に1回は趣味の時間や友人と食事をするなど、休日はしっかり心身を休ませましょう。
④相談できる環境を整える
自分の感情を守るには
感情労働では、感情や本音を表出できる場がないことが問題となります。
感情に抑制がかかると自分自身の感情を実感する働きも鈍くなります。
すると、モチベーションが曖昧になり、メンタルヘルスの低下につながります。
日頃から気軽にコミュニケーションが取れる環境や、相談できる相手など、自分が安心して思いを話せる場を持つことを意識しましょう。
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