終末期がん患者の心理過程とうつについてセミナーを開催しました!
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【JTCAセミナー】終末期がん患者の心理過程とうつを開催いたしました
講師
名古屋市立大学大学院 精神・認知・行動医学 名古屋市立大学病院
こころの医療センター・緩和ケアセンター
明智 龍男 先生
講義では、先生の多くの興味深い研究をご紹介していただきました。
研究を通し、がんが人のこころや行動に与える影響について紐解きながら
「医療・医学は患者さん、ご家族の幸せに貢献できているのだろうか?」
を考え、終末期ケア専門士にとってのケアの意味を振りかえり、ケアの基本に立ち返る。
そんなセミナーとなりました。
▶前半の講義では
サイコオンコロジーについて
うつが心に及ぼす影響
こころや行動が、がんに及ぼす影響
うまくいかなかった研究からの学び
など、のお話しをしていただきました。
以下の4つのポイントをおさらいしましょう。
うつは多要因であるが、最も大きな要因となるのは直近のライフイベントである
がん患者さんは「がんの罹患」そのものが直近のライフイベント
うつは、幼少期の愛情養育や対人関係に、遺伝や多くの環境因子に付随して現れる
終末期の低活動型せん妄に精神薬は有効といえず、ケアが基本となる
▶後半の講義では
がん患者・家族の心理の理解
ケアの基本となるコミュニケーション「聞くと聴く」「答えると応える」
抑うつリアリズムとは
アクセプタンス&コミットメント(ACT)の考え
ディグニティーセラピー
など、のお話しをしていただきました。
以下の5つのポイントをおさらいしましょう。
がん患者の不安は、こわいけどよく分からない不確実な脅威に直面した感情である
がん終末期は、自我を含めたすべてに対する喪失が抑うつを引き起こす
がん終末期患者の怒りは、そういった不安や恐怖などの感情の置き換えである
怒りは、家族や医療者ではなく、病気に対しての不安や恐怖である
これらを知ることが患者や家族の理解を深め、ケアの糸口となる
▶講義後の対話から学んだこと
・がんの診断期や初期から適応障害やうつ病の有病率はおよそ10%を超えている
・がん患者は自我を含む多くのものを失っていく過程を経験し、大きな不安や恐怖を抱えており、がん患者の抑うつは病的なものではなく正常な心理過程であり、なんでも病気としてとらえてしまわない事が必要である
・希死念慮を抱く多くのがん患者は、精神科医と話して何になるのか、私の気持ちが本当にわかるのかと消極的である。受身的な希死念慮は、ケアで対処可能なことが多い。
・がんの病期による希死念慮は、診断時や治療期では、抑うつや疼痛が要因となるが、緩和ケア病棟に登録した終末期がん患者には他者依存への懸念も存在する。いろんなことが出来なくなり失っていく過程にもできることはある。
・ディグニティーセラピーは、「患者が最も大切であると考えていることを、大切な人に伝えておくことで、生きた証を残せるのではないか」という研究で、日本では「死」に対する文化的背景から参加を拒否する人が多く、研究結果は芳しくなかった。しかし、参加者された人からは、「参加してよかった」という言葉が聞かれており、ディグニティーセラピーの意義を知った。
・がん患者・家族の心理を理解する、その基本は「ケア」であり、患者の不安・困りごと思いなど言葉の裏にあるメッセージを「聴く」こと、そしてそれに向きあり「応える」ことの大切さ。それが、本当のケアであること。
▶受講生からの言葉
・看護の力を信じる機会を頂けました。
・プロフェッショナルでも悩み続け葛藤していることを知り、自分へのエールになりました。
・終末期における心理ケアのあり方について深く考える機会となりました。
・ディグニティーセラピーが周知されれば、自然と残したい言葉が出てくるのではないかと感じました。死に対する恐怖を少しでも和らげることで、家族の悔いが残らないようにできればと感じました。
・せん妄やうつ状態に効果のある薬剤は?と尋ねたかったのですが、まさに目からうろこでした。薬を使う前に、やらなけらばならないことがある気がしました。少しせん妄やうつ状態に対しての認識や捉え方が変わった気がします。
明智先生のご講義は、受講生の皆さんのケアをより一層、患者さん・ご家族の幸せに貢献できるものに導いてくださる。そんな実りのある充実した時間となりました。
【終末期ケア専門士】について
終末期ケアを継続して学ぶ場は決して多くありません。
これからは医療・介護・多分野で『最後まで生きる』を支援する取り組みが必要です。
時代によって変化していく終末期ケア。その中で、変わるものと変わらないもの。終末期ケアにこそ、継続した学びが不可欠です。
「終末期ケア専門士」は臨床ケアにおけるスペシャリストです。
エビデンスに基づいた終末期ケアを学び、全人的ケアの担い手として、臨床での活躍が期待される専門士を目指します。
終末期ケア、緩和ケアのスキルアップを考えている方は、ぜひ受験をご検討ください。