【JTCAセミナー】老衰の前兆と診断∼多職種で診る・看る・支援する∼|一般社団法人日本終末期ケア協会

【JTCAセミナー】老衰の前兆と診断∼多職種で診る・看る・支援する∼

2022.12.19 イベント

目次

2022年11月16日

日本終末期ケア協会は、
終末期ケア専門士約200名を
対象にZoomを使用した
”JTCAオンラインセミナー”
を開催しました。

講師としてお招きしたのは
奏診療所 今永光彦先生!

テーマは、
老衰の前兆と診断
∼多職種で診る・看る・支援する∼

です。

講義の一部を簡単に
まとめてご紹介いたします!

老衰の診断における注意点

老衰は定義や概念が曖昧であり
明確な診断プロセスがはっきりしていません。

そのため

  • 適切な診断・治療が行われずに老衰と診断されてしまう
  • 本人や家族の意向を考えれば、老衰と診断されるべきだったのに、過剰な検査や治療で病死の診断をされてしまう

というような課題があります。

そこで、老衰の診断には次のような
2つ視点をもつことが重要です。

「治る可能性のある症状について」の視点

経口摂取量が低下している患者さんの
便秘・うつ・薬剤・せん妄・咀嚼は
治る可能性のある症状です。

老衰と診断する前に、薬剤のレビューや
口腔内・咀嚼のチェック
便秘がないかをまず確認します。

「本人や家族の意向や考え方について」の視点

体に負担がかかるような検査の前に
本人や家族の意向や考え方を考慮して
QOLに寄与するのかどうかを考えていきます。

これらのような視点をもって
多職種とディスカッションを行いながら
診断にあたっていくことが大切ですね。

老衰の終末期における症状とは

老衰の終末期における症状で
最も多いものが、「食思不振」です。

「食べられない」だけではなく
「食べなくなる」ことです。

それでは、食思不振に
どのように対処すれば良いのでしょうか。

  • 経口栄養補助食品を使用する
  • 食事介助をする家族や介護士から情報収集を行い、多職種で介入する
  • 経管栄養や輸液などの人工栄養を行う(必ず文化的・社会的側面や患者・家族の価値観も考慮する)
  • 人工栄養を行わない場合は、Comfort feeding only「苦痛とならない範囲で本人が楽しめるように」を大切にする

「食べる」ということをどのように考え
支えていくかが重要となりますね。

終末期ケア専門士との対話

講義終了後には、質疑応答の時間を設けています。

終末期ケア専門士の皆さんと
様々な意見を共有できました。

「老衰かな?という患者さんやご家族とお話をするときに、何か気にかけていることはありますか?」

という質問対して、

「普段の会話で、できるだけ気持ちを感じ取り、ゆっくりと時間をかけて老衰のことをお話しします。」

といった回答を頂きました。

おわりに

いかがだったでしょうか。

受講後のアンケートでは、

  • なかなか面会ができない現状の中、家族と信頼関係を構築していくことが大切ということを改めて考えさせられました。

  • 高齢になり徐々にいろいろな機能が衰えていくことは皆が通る道だと思います。可逆的な部分がないかの確認がしっかりできているのであれば、家族が安心して”老い”に向き合えるよう看護師として見守れればと思いました。

  • 老衰というのは受け入れ難いことでもあり本人も家族もとても迷うと思いますが、医療者も一緒にたくさん悩むことなんだなと思いました。

といった感想をいただきました。

日本終末期ケア協会では、
講義形式はもちろんのこと
参加した人が自分の思いや悩みを話すことで
明日へのヒントを得られるような
イベントを開催しています。

今後もさまざまな角度や方法から
学びの体験を作っていきたいと思います。

終末期ケア専門士の皆様のご参加をお待ちしております。

 

【終末期ケア専門士】について

「終末期ケア」はもっと自由になれる|日本終末期ケア協会

終末期ケアを継続して学ぶ場は決して多くありません。

これからは医療・介護・多分野で『最後まで生きる』を支援する取り組みが必要です。

時代によって変化していく終末期ケア。その中で、変わるものと変わらないもの。終末期ケアにこそ、継続した学びが不可欠です。

 

「終末期ケア専門士」は臨床ケアにおけるスペシャリストです。

エビデンスに基づいた終末期ケアを学び、全人的ケアの担い手として、臨床での活躍が期待される専門士を目指します。

終末期ケア、緩和ケアのスキルアップを考えている方は、ぜひ受験をご検討ください。