悲嘆プロセスをケアに活用する

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悲嘆プロセスをケアに活用する

JTCAゼミ

グリーフとは

「グリーフ」とは、「大切なものを失くした深い悲しみ」のことです。

言い換えると、大切な人やペットといった命の喪失、病気やケガ、体の一部の喪失、環境の変化による喪失、役割の喪失、自己肯定感やアイデンティティなど自尊心の喪失などの自分が大切にしているものの喪失による悲嘆のことです。
悲嘆は、嘆き悲しむ、気分が落ち込むといった心の反応だけでなく、眠れない、食欲がないといった体のバランスを崩すといった身体的な反応や日常生活の行動的な変化、スピリチュアルな変化を伴う反応です。かけがえのない人やものを失うことにより心身に起きるのが悲嘆反応であり、これは人間に本来備わっている防衛反応の一種です。つまり、悲嘆反応そのものは正常な反応であるといえます。

 

悲嘆のプロセス

悲嘆は価値観や置かれている状況、喪失した対象や喪失した状況などによって、人それぞれ異なります。日頃、ケアを行う中で、多様な悲嘆にどう対応すればよいのか、戸惑いや不安を感じることもあると思いますが、悲嘆のプロセスは、研究者たちによって理論化されており、これらを参考に悲嘆について考えることができます。

 

家族の悲嘆のプロセス

ドイツ・オルデンブルクで生まれた哲学者アルフォンス・デーケンは、大切な人との死別によるショックを受けてから、立ち直るまでを12段階のプロセスに分類しています。

アルフォンス・デーケン 悲嘆のプロセス12段階

1段階 精神的打撃と麻痺状態
大切な人の死に直面し、頭が真っ白になったような衝撃を受ける段階。
2段階 否認
大切な人の死を認めることができず否定する段階。突然死の場合は、否認が顕著に表れる。
3段階 パニック
死を確信するが、否定したい感情が合わさり、パニックとなる段階。
4段階 怒りと不当感
「なぜこんな目に合わないといけないのか」という不当感と、死に至った原因に対し怒りを感じる段階。
5段階 敵意とうらみ
周囲の人や故人に対して、やり場のない感情を敵意という形でぶつける段階。
6段階 罪意識
「こんなことになるなら、生きているうちにもっとこうしてあげればよかった」と、過去の行いを悔やみ、自分を責める段階。うつ症状や引きこもり、自殺の危険がある。
7段階 空想形成・幻想
故人がまだ生きているかのように思いこみ、実生活でもそのようにふるまう段階。
例えば、「食事を準備する」「故人の部屋の状態を保つ」などである。
8段階 孤独感と抑うつ
葬儀などが一段落し、途端に寂しさが募る段階。
9段階 精神的混乱とアパシー
生活目標を見失い、どうしていいか分からず、関心を失う段階。
10段階 あきらめ‐受容
自分の置かれた状況を受け入れ、つらい現実に向き合おうと努力が始まる段階。
11段階 新しい希望‐ユーモアと笑いの再発見
こわばっていた顔に、微笑みが戻り始める段階。
大切な人の死という永遠に続くような苦しみも、いつかは必ず希望を見出すことができる。
12段階 立ち直りの段階‐新しいアイデンティティの誕生
立ち直りの段階。
悲嘆のプロセスを経て、新たなアイデンティティを獲得する。

全ての人がこの12段階を経るわけではなく、順番通りすべての段階を経る人もいれば、順番が異なる人もいます。

また、プロセスを行ったり来たりする場合もあります。

 

死を受け入れるとは

受容することを目標にしそうになりますが、受容の段階までを辿る経過や時間は一人一人異なります。受容とは、「悲しみを共に抱え、自分の人生の歩みを進めていくこと」であり、「悲しみを乗り越えること」ではありません。その本質的意義を見落とすことなくケアに繋げることが大切です。

 

グリーフケアとは

グリーフケアとは、「喪失の悲嘆へのケア」を意味します。人の死へのグリーフケアは、患者や家族(遺族)に対する悲嘆ケアであり、患者が亡くなる前から死亡後までの幅広いケアを含みます。グリーフケアは、正常な悲嘆のプロセスを経過するためにも、思う存分悲しみ、死を受容するための重要なケアであるといえます。
生ある時、残された最期の時に患者・家族の苦しみや悲しみに寄り添うこと、死亡宣告後に遺族が故人とお別れできる時間を確保すること、エンゼルケアを家族とともに行い、故人の思い出を語ることは、どれもグリーフケアの1つです。ただし、家族が声をかけたり、直接触れることができるエンゼルメイクや保清などから勧めるとよいでしょう。また、死別後しばらくして、挨拶に来られた遺族への対応も重要なグリーフケアの場面となります。遺族に寄り添い、いたわる気持ちで、遺族から語られる言葉に耳を傾けます。これは、遺族がどのようなグリーフワーク(悲嘆作業)を歩んでいるのかを知る機会ともなります。