グリーフケアとは

2022.10.14 JTCAゼミ

目次

グリーフとは、日本語で「悲嘆」といいます。悲嘆とは、近親者との死別・別離をはじめとして、さまざまな愛情や依存の対象を喪失した際に生じる反応のことをいいます。一般的にはまだまだ広く知られていない悲嘆ケア。誰にでもわかるよう簡単に説明します。

悲嘆は、単に嘆き悲しみ、気分が落ち込むといった心の反応だけではありません。睡眠障害、疲労感、食欲の低下などによる身体的な反応、日常生活や行動的な変化、スピリチュアルな変化を伴う反応も含まれます。最近は、ペットとの死別を通してグリーフケアを必要とされる方も多くなっています。

人間関係の喪失には離婚や失恋も含まれますが、その中でもっとも重大な喪失の一つが身近な人との死別です。

 

グリーフに影響を与える要素

悲嘆の経験は一人一人違い、似たような背景があったとしても悲しみ方や悲しみへの取り組み方、そして回復の道すじは決して同じではなく、誰の悲しみがより深いなどと比べることはできません。

悲嘆に影響を与える要素として、以下のものが挙げられます。

亡くなった人との関係 愛着の強さ、矛盾した関係、続柄など
亡くなり方 病死、事故死、突然死、自死、犯罪被害による死など
個人の喪失の歴史 過去に経験した喪失、悲嘆への取り組み方、人格など
社会的な要素 文化・宗教の違い、社会的なサポートのあり方など
同時期に起こるストレス 転勤、失業、経済的問題、結婚・出産など
グリーフカウンセリング 悲しみを癒すためのハンドブックより

悲嘆反応(グリーフ)のプロセス

悲嘆反応のプロセス過程にはいくつかの理論があります。臨床現場で看取りケアに携わる医師や看護師は知っておくといいでしょう。

 

ここでは、哲学者であるアルフォンス・デーケンの悲嘆のプロセス12段階を取り上げます。

  • 精神的打撃と麻痺状態
  • 否認
  • パニック
  • 怒りと不当感
  • 敵意と恨み
  • 罪意識
  • 空想形成、幻想
  • 孤独感と抑うつ
  • 精神的混乱と無関心
  • あきらめ
  • 新しい希望
  • 立ち直り

故人との死別を経験したすべての人が、このプロセスを体験するとは限りません。悲嘆反応による様々な症状を体験しながら、このプロセスを行ったり来たりします。状態に合わせた介入が必要ですが、無理してプロセスを進めようとする必要はありません。いつから始めればいいのか迷うこともありますが、気づいたその時がチャンスです。

立ち直りまでの期間は人によって違います。数か月かかる人もいれば、数年と長期にわたる方もいます。故人との家族関係や年齢、病気の経過などによっても違うでしょう。

 

死への準備

死は特別な出来事のようでいて生活の中にごく身近にあります。生と死はひとつのつながりであり、切っても切れない関係です。しかし人は毎日の生活でそのことを意識しているでしょうか。生きていくことに夢中であれば、死を意識して生活していくことは難しいでしょう。

自分の悲嘆、身近な人の悲嘆に向き合うためには、日々、喪失に向き合う意識をもつこと、生と死を身近なこととして学ぶ準備が役に立ちます。

 

グリーフケアの方法

グリーフケアは本来「喪失の悲嘆へのケア」という意味で、「死別への悲嘆へのケア」だけをさす言葉ではありません。しかし、日本では一般的に遺族ケアの同義語として“グリーフケア”が使われています。

遺族ケアは、「遺族への直接的意図的な支援だけではなく、患者の死の前後を問わず、結果として遺族の適応過程にとって何らかの助けになる行い」と広く理解されています。

現在、多くのホスピス緩和ケア施設で提供されている遺族ケアプログラムには、手紙やカードの送付、追悼会、遺族のサポートグループ、電話相談や面談、情報提供、講演会などがあります。

在宅医療の場では、看取りの後に遺族訪問を行っている事業所もあります。

 

グリーフケアを行う意味:死別を通して人は成長する

人は身近な人の死によってさまざまな影響を受けます。その人の存在そのものを失った空虚な感情を抱きます。

死別によって失うものがある一方で、死別の経験を通して人は学び、成長するといわれます。看取りに対する満足感や達成感はこれからの自信につながります。遺族が身につけた介護の知識や技術は、その後の生活に役立ち、これから看取りをする人に、実際的なアドバイスを提供することもできます。また、これからの困難に向かう力を高めるかもしれません。さらに、看取りにおける罪悪感や後悔の感情は、これからの生きるエネルギーに変わることもあります。

大切な人との死別はつらい経験ですが、大きな学びとなり、人間的な成長や生きる力にもなりえるのです。

しかし、看取りの場の7割は病院であるというのが今の日本の現状です。看取りケアに携わる医療介護従事者が、グリーフケアに対する知識を深め、『後悔を少しでも小さくする関わり』を増やしていくことで、病院や施設であっても【人生を生きていく糧となる看取りケア】が広がっていくと思います。

そんなケア従事者を、当協会では育成していきたいと思っています。