「身寄りがない終末期患者のために~司法書士との連携でできること~」【学びLabo】
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2025年7月24日、学びLabo「身寄りがない終末期患者のために~司法書士との連携でできること~」を開催しました。

講師
大腸肛門病センター高野病院
緩和ケア科
鳥崎 哲平先生
司法書士法人福村事務所
代表司法書士
福村 雄一先生
高齢化に伴い高齢者の単独世帯が増加する中で、身寄りのない患者も増えると考えられます。医療・介護の現場でも身寄りがない患者に出会う機会は増えると予測できます。取り巻く問題はなにか、どのように対応するのがよいのか。
講義では身寄りがない患者が取り巻く問題から身元保証人/身元引受人の役割、成年後見制度など医療・介護の場で一度は直面することについて司法書士の視点でお話ししていただきました。 身元保証人や後見人が保証人になっているけれどどんな役割があるのか、どのような人に適応されているのか、後見人になるにはどのくらいの時間がかかるのかなど知らない人も多いのではないでしょうか。そのような現場で抱く制度の疑問について司法書士の先生からわかりやすく学べるセミナーとなりました。

前半の講義では
「身寄りがない」とは広義の意味で家族等と連絡がつかないか家族の支援が得られないことをいいます。全世帯に占める単独世帯(独居)の割合は約1/3に達しており、その半数が65歳以上の高齢者の一人暮らし世帯といわれています。高齢化に伴い身寄りがない患者も増えると考えられます。例えば、入院の手続きをする人がいない、入院中の身の回りの世話(必要物品の購入など)をすることができないなどの問題が生じます。では、そのような人は入院できないのでしょうか。身元保証人/身元引受人に求められる役割を項目に分け、できることやできないことについて詳しくお話ししていただきました。

後半の講義では
身寄りがない患者の価値観や尊厳を守るために、患者の生活や社会的側面に関する部分に着目してお話ししていきました。病気になっても患者は社会の一員であるという認識をしっかりと持ち、司法書士の先生と連携することで病気を抱えながらも生活空間を整えていくことができます。身寄りがない患者をケアしていく上で、多職種で連携し多角的な視点で患者を捉えることが重要であるとお話ししていただきました。 質疑応答の部分では費用の問題やどのような支援を届けることができるのか、またはどういうことができないのかをわかりやすく解説していただきました。成年後見制度について今後どのように役割が変わってくるのか、現在どのような案が出ているのかを踏まえて教えていただきました。また、司法書士の先生が対象者と話す上で気を付けているポイントなどについても伝えていただきました。
受講生の皆さまの感想
Aさん
後見人制度や任意後見人制度の中身はある程度理解していましたが、医療との連携をしていく具体的な内容がわかり、大変勉強になりました。わかりやすい講義をありがとうございます。又セミナーがあれば是非参加したいです。
Bさん
職場で社会的問題に遭遇した際、MSWに依頼してお任せすることが多く、自身の範疇ではないと思い込んでいた一方で、目の前の患者さんがこまっておられるのに、何も手立てがない自分に歯がゆさを感じておりました。今回の学びを通して、院内の多職種はもちろん、病院内で留まることなく、もっと色んな支援について自分自身、情報を集めること、知ろうとすることが大切だと感じました。
Cさん
患者、利用者にとっての最善をサポートするには医療介護の分野だけでは到底無理で、そういうことが認識される世の中に少しづつ進歩していっているんだなと、講義を通してとても感じましました。 いろいろな領域の信念をもった素晴らしい講師の先生と出会える、終末期ケア協会に本当に感謝しています。
終わりに/講義を振り返って
高齢社会を支えていく上で、多職種連携はとても重要です。しかしながら、連携ができていないことも多くあります。だれに何を聞けばよいのかを知っていることで支援の幅も広がります。今回のセミナーを通して成年後見制度でできることを知り、支援に繋げられる医療・介護の現場で働く人が増えることで、患者支援をより良いものにしていきましょう。
【終末期ケア専門士】について

終末期ケアを継続して学ぶ場は決して多くありません。
これからは医療・介護・多分野で『最後まで生きる』を支援する取り組みが必要です。
時代によって変化していく終末期ケア。その中で、変わるものと変わらないもの。終末期ケアにこそ、継続した学びが不可欠です。
「終末期ケア専門士」は臨床ケアにおけるスペシャリストです。
エビデンスに基づいた終末期ケアを学び、全人的ケアの担い手として、臨床での活躍が期待される専門士を目指します。
終末期ケア、緩和ケアのスキルアップを考えている方は、ぜひ受験をご検討ください。