すんなりいかない…腹水ケアを総復習!【学びLabo】
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2024年9月12日、学びLabo「すんなりいかない…腹水ケアを総復習!」 を開催しました。
がんをはじめとする様々な病気から発症する腹水。腹水による腹部膨満感は患者さんにとっても非常に苦痛が生じるものです。また症状の改善は難しく、再発を繰り返すことも多く見られます。
今回は緩和ケア医としてご活躍され、緩和ケアに必要な知識やケアを積極的に発信されている大腸肛門病センター高野病院の緩和ケア科 鳥崎哲平先生をお迎えして、腹水の実践的なケアについて教えていただきました。
講師
大腸肛門病センター高野病院 緩和ケア科
鳥崎 哲平先生
腹部膨満感=腹水ではない。腹部膨満感のアセスメントが大切
前半の講義では、以下について講義していただき、腹部膨満感の原因は何かをアセスメントすることの大切さを教えていただきました。
腹部膨満感の鑑別、アセスメント
腹部膨満感への対応
排便の基礎知識とケア
例えばがんの患者さんが腹部膨満感を訴えていても、すぐに腹水の貯留が原因であると気楽に考えることは避けるべきです。その原因を探るには非侵襲的な腹部エコーが有効であると教えていただきました。
看護師や放射線技師、臨床検査技師でも安全に使用できるエコーを使って、便秘の状態や、腸閉塞、尿閉の有無を確認することができます。がん患者さん特有のオピオイド使用後の便秘の場合、末梢性オピオイド受容体拮抗薬を使用することや、排便に関する苦痛の訴えを傾聴することが大切です。また腹部膨満感は原因が一つでないことも多くあるため、原因と考えられるものをなるべく減らすことが有効であるといえます。
腹水へのアプローチの実際
後半は以下について講義していただきました。
腹水を理解し、説明する
腹水を抜くか抜かないか
腹水の薬物療法
後半は、腹水が貯留する原因、腹水が溜まったときに抜いたほうがよいのかと誰もが悩む問題について教えていただきました。末期がん患者において腹水を抜くかどうかは生存期間に有意差はなく、アルブミンが一緒に抜けて予後が悪くなるということを説明するエビデンスもないようです。腹水による苦痛が強ければ少しずつ抜くという方法が患者さんにとっても安楽な方法だということがわかりました。
薬物療法、腹腔穿刺や持続的腹腔ドレナージ、CARTなど侵襲的な治療法の実際を学び、ケーススタディでは実際にどのような治療を行ったかを提示していただきました。
講義を振り返って
がん患者や肝疾患によく見られる腹部膨満感ですが、腹水が溜まっているから苦しいと安易に判断するのは望ましくありません。患者さんの苦痛には腹水以外の原因もあることや、複数の原因が絡み合っていることがあります。一つひとつの原因に向き合い、患者さんにはどんな治療やケアが必要かを考えていきたいと思いました。
参加した皆さまの感想
Aさん
腹水貯留、腹部膨満の患者様は「痛いわけじゃない。張っているのが辛い」と言い薬剤で苦痛をとることが難しい印象でした。本日学んだこと(排便コントロール、保湿ケアなど)、自身ができることをまず行い、医者を巻き込んで患者様の苦痛軽減の援助を行いたいと改めて思いました。
Bさん
とてもわかりやすく、有意義な講義でした。先生に診て頂ける患者様は幸せだと思います。患者様の気持ちに寄り添うことが1番大事だと思います。ありがとうございました。
Cさん
症例や病態の説明をわかり易い言葉で説明してくださり、ありがとうございました。機会があればまたぜひ宜しくお願い致します。
【終末期ケア専門士】について
終末期ケアを継続して学ぶ場は決して多くありません。
これからは医療・介護・多分野で『最後まで生きる』を支援する取り組みが必要です。
時代によって変化していく終末期ケア。その中で、変わるものと変わらないもの。終末期ケアにこそ、継続した学びが不可欠です。
「終末期ケア専門士」は臨床ケアにおけるスペシャリストです。
エビデンスに基づいた終末期ケアを学び、全人的ケアの担い手として、臨床での活躍が期待される専門士を目指します。
終末期ケア、緩和ケアのスキルアップを考えている方は、ぜひ受験をご検討ください。