患者から「死にたい」と言われたらどうしますか【JTCAセミナー】
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2024年8月9日、JTCAセミナー「ケアを鍛えるシリーズ 〜患者から「死にたい」と言われたらどうしますか〜」 を開催しました。
今まで何度もご登壇いただき、毎回多くの方から反響をいただいている、新城先生の「ケアを鍛えるシリーズ」。
今回のテーマは、『「死にたい」に現場で向き合う 自殺予防の最前線』という松本俊彦先生の著書で、新城先生も執筆された内容から、終末期の現場で「死にたい」と告白する患者への対応についてです。新城先生の豊富な経験と洞察に基づいた講義を通じて、終末期ケアの本質に迫る時間となり、非常に充実したセミナーとなりました。
講師
しんじょう医院 院長
緩和医療専門医
新城 拓也 先生
終末期の患者さんとどう向き合うか
執筆された本の内容から以下について講義していただきました。
序章
肉体の苦痛とこころの苦痛
一つの顔と向き合わない
序章では、新城先生の緩和ケアへの取り組みや「一緒に歩み、ガイドする」という患者さんとの関わり方のお話がありました。
2016年のホスピスで勤務されているときのお話でしたが、そのマインドは今も変わらず患者さんと向き合い続けておられます。
肉体の苦痛とこころの苦痛についてでは、患者さんが抱える肉体的な痛みを和らげることで、ようやく心の悩みと向き合うことができる、というお話が印象的でした。また、スピリチュアルペイン(実存的苦痛)という、心の奥底にある苦しみへの対応も重要であることが学びとなりました。
医師と患者さんの信頼関係が、治療を進めるうえで非常に大切であり、その絆が深まることで心の苦痛にも寄り添うことができるのではないでしょうか。
一つの「顔」と「向き合う」のではなく「見守る」。
患者さんと周囲のいろいろな方との関係性や関わりを知ることで、患者さんの「分人」といわれる、ぞれぞれの顔があることに気がつきます。
苦悩は患者さん自身の課題ですが、医療者はせっかちに解決しようとしてしまいます。医療者が主体的に苦悩を解決しようとするのではなく、患者さん自身で解決できるように援助することが必要であるとお話がありました。
今回のセミナーが医療者がどういった考え方・立ち位置で関わったほうがよいかを学ぶきっかけになったのではないでしょうか。
講義を振り返って
新城先生の「一緒に歩み、ガイドする」姿勢は今も変わらず、肉体的苦痛の緩和が心の悩みに向き合う基盤となります。医師と患者の信頼関係が深まることで、より良いケアが実現できます。医療者は患者の苦悩の解決を急がず、支援することが大切だと学びになりました。
参加した皆さまの感想
Aさん
心のケアに関して、治そうとすると治らない。待つことで治ることもあると先生からの話をお聞きし、医療従事者の立場として責めていくのは逆効果なことを理解し、継続が必要なことを活かしていきたいと思います。
Bさん
状況や立場などでも、変化してくる、人と人のコミュニケーションの難しさを感じることができました。また、考え方を変化させる柔軟性を持って、自身も変わっていきたいと思いました。
Cさん
医療・介護の現場において一面性だけで患者・利用者の訴えを聴いて理解したつもりになるのが、どれほど得られる情報の扉を狭めてしまうか。ということの危険性を感じました。自分一人だけが五感をフル回転させるのではなく、チーム一丸となって一人ひとりの患者と向き合う姿勢の大切さを学び直せて良かったです。
【終末期ケア専門士】について
終末期ケアを継続して学ぶ場は決して多くありません。
これからは医療・介護・多分野で『最後まで生きる』を支援する取り組みが必要です。
時代によって変化していく終末期ケア。その中で、変わるものと変わらないもの。終末期ケアにこそ、継続した学びが不可欠です。
「終末期ケア専門士」は臨床ケアにおけるスペシャリストです。
エビデンスに基づいた終末期ケアを学び、全人的ケアの担い手として、臨床での活躍が期待される専門士を目指します。
終末期ケア、緩和ケアのスキルアップを考えている方は、ぜひ受験をご検討ください。