家族心理学の専門家がひもとく 家族ケアの深い世界【学びLabo】|一般社団法人日本終末期ケア協会

家族心理学の専門家がひもとく 家族ケアの深い世界【学びLabo】

2024.9.24 イベント

目次

2024年7月25日、学びLabo「家族心理学の専門家がひもとく 家族ケアの深い世界」 を開催しました。

医療では患者ケアが中心になりがちですが、終末期ケアにおいては家族ケアも欠かせません。
家族の悩みは決して二の次ではありません。「第二」として扱うのではなく、あえて「第一」として丁寧に聴いていき、患者と家族をひとまとまりとした「システムとしての家族」の見方が紹介され、終末期ケアにおける家族ケアの可能性をともに考える時間となりました。

講師

東北福祉大学 総合福祉学部 福祉心理学科教授 
三谷 聖也先生

家族の誰かが病気になるということ

前半は以下について講義していただきました。

家族の捉え方、現代の家族機能の変化

終末期の家族とスープラシステム

家族員が病になったときの「役割代行負担」と「医療協力負担」

現代における家族は、血縁や戸籍だけでは定義することはもはやできず、個人の認識により自分が家族と思った人が家族であるというように変化しているということや、ジェンダー平等の意識が浸透していることによって家事・育児の役割分担や夫婦の交流の欠如など新たな問題が指摘されていることなどを教えていただきました。

また、家族員の誰かが終末期に直面したときは、家族にとって最期にして最大の癒しの機会ともなりえます。

「家族は第二の患者」として扱うのではなく、家族が抱えている悩みに序列をつけず、耳を傾けることが大切だとお話しされていました。

その一つの方法として、家族システムと医療システムをあわせて包括的に捉えるスープラシステムを用いることが有効です。終末期の患者は「患者役割」、家族は「患者の家族の役割」を獲得することになり、家族員の今までの生活や役割が大きく変化していくことを学ぶことができました。

「患者の家族」というアイデンティティに目を向ける

後半は、以下について講義していただきました。

家族の最も弱い部分に負担のしわ寄せが来ることがある

家族の語りは患者の影に隠れ、家族は途方に暮れてしまうことがある

家族に医療協力負担が加わる場合でも,家族の輪郭が強化されることもある

主に先生の臨床経験からさまざまな家族に関する症例を紹介していただきました。
①医療協力負担と役割代行負担が家族内でうまく再配分できた事例

②祖父のがんにより孫が不登校になった裏には、孫の母親が医療協力負担の役割を担ったゆえに、孫が孤独や喪失感に苦しんだという理由があった事例

③家族の輪郭が希薄になっている現代において、医療協力負担が発生することによってプラスに働き、夫婦の絆が深まった事例など、

家族を中心に捉えた事例だからこそ見えてくる世界がたくさんあることに驚かされました。と同時に、普段は患者中心のケアになってしまい、家族の悩みや問題に気づいていないこと、偏った目線で家族を捉えていたことに気付かされました。

講義を振り返って

家族ケアを行うときは家族+医療の上位システムという包括的な視点を持ち、キーパーソンだけでなく来院していない家族への影響も考える必要があります。今回の講義は、家族内で公平に役割と利益が分配されるように支援することが大切だと学ぶことができました。

また、今回講師を担当していただいた三谷先生は家族ケア専門士の公式テキストの執筆もしていただいています。家族ケア専門士については、HPをご覧ください。

患者と家族のこころを照らす「家族ケア専門士」

参加した皆さまの感想

Aさん

ジェノグラムを読み込み、一人だけに負担がかかっていないか、家族として日常生活を送る時に困っている人はいないかということに思いを巡らせることが大切と感じました。

Bさん

キーパーソン以外の家族のことも気に掛けることや家族の気持ちを伝えやすいような関わりを自分から行うことが大切だと思いました。

Cさん

患者さんのご家族の悩みを二の次として考えて、なかなか時間をかけて話を聞く機会を作れずにいましたが、明日からは患者さんの話を聞くことができるように時間調整していきたいです。

 

【終末期ケア専門士】について

「終末期ケア」はもっと自由になれる|日本終末期ケア協会

終末期ケアを継続して学ぶ場は決して多くありません。

これからは医療・介護・多分野で『最後まで生きる』を支援する取り組みが必要です。

時代によって変化していく終末期ケア。その中で、変わるものと変わらないもの。終末期ケアにこそ、継続した学びが不可欠です。

 

「終末期ケア専門士」は臨床ケアにおけるスペシャリストです。

エビデンスに基づいた終末期ケアを学び、全人的ケアの担い手として、臨床での活躍が期待される専門士を目指します。

終末期ケア、緩和ケアのスキルアップを考えている方は、ぜひ受験をご検討ください。