ケアする組織がオモロイ仕事をするには ~ケアする人や組織のケア~【学びLabo】
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2024年8月20日、学びLabo「ケアする組織がオモロイ仕事をするには ~ケアする人や組織のケア~」 を開催しました。
ケアに従事している医療従事者が抱えている、職場の環境や人間関係に関する「もやもや」とした気持ちに焦点を当てた講義をしていただきました。
「あの人より仕事をしているのに、なぜ給料は低いの…?」
なぜ、ケアをする私たちにそういったやるせない気持ちが起こるのでしょうか。
ケアを提供する側の思いを竹端先生にアシストしてもらいながら、終末期ケア上級専門士の方3名と一緒にディスカッションを行っていきました。
講師
兵庫県立大学 環境人間学部 教授
竹端 寛 先生
メンバーの機能に注目し、チームの力を発揮する
前半は以下について講義していただきました。
ケアする職場での傷つきを捉え直すこととケアする自身の影に向き合う
自分の価値観を押し付けたり「他者の合理性」を理解したりせずに、他者へのアセスメントを行っていないか
能力ではなく機能を診る
「ケアする職場での傷つきを捉え直す」ことについてお話ししていただきました。
竹端先生は、勅使川原真衣さんの著書「職場で傷つく」を引用し、能力主義で人を断定すること、他者比較をすること、序列化を行うことが人を傷つける要因だと述べています。そのような他者へのアセスメントを行う時に、自分の価値基準で判断していないかということを自覚する必要があります。
一見、「提出物が期日までに出ていない」や「遅刻ばかりしている」という行動は、やる気の無さなど非合理性から起きている行動に見えます。しかし、本人にとってその行動は出来事と理由の連鎖と蓄積から生まれた生活史の一部であり、そこには切実な合理性があるのです。
職場でチームの力を発揮出来るようにするには、一人ひとりの能力ではなく機能で診ることが大切です。目標達成のためにはチームメンバーにはどのようなメンバーがいて、どのような機能を持っているか、機能が補えない部分については、「外す」という行為ではなく、今のメンバーで拡張することができないかということについて考えていきます。
自己責任的能力主義(仕事上起きていることは自分が責任を取るということ)が前提になっているとチームは潰れてしまいます。問題社員を排除するのではなく、チームでの関係論的視点に基づく「よりよい機能強化」作りが大切だと学びました。 ディスカッションでは、3人の終末期ケア上級専門士の方に、自分の「モヤッとした」経験談を竹端先生に軽快にアシストしてもらいながら語ってもらいました。それぞれの深刻な「モヤッと」はどの職場でも起きる問題だと感じました。
「もやもや」の原因は自分自身にあるかも?
後半は、以下について講義していただきました。
「許せない相手」は自分の影や早期不適応スキーマが影響していないか
相手の問題と自分の問題を切り分ける
まずはとことん相手の合理性を聞く
「もやもや」の原因は自分の中にもあるかもしれないということをお話していただきました。
幼少期の中核的感情欲求が満たされずに形成された早期不適応スキーマによって、「こうでないといけない」といった価値観を相手に押し付けてはいないか。
自分が抱えている影に引きずられ、相手の問題として捉えていないかを考えることが大切と学びました。自分を振り返ることがとても大切です。
まずはとことん相手の話を「聞く」。ここでは相手の合理性を査定したり、否定したりせずに聞きます。
そして「一緒に考える」。相手が納得する達成出来る目標を一緒に考えること、定期的に面談を行って、その方法が適切かどうかを確認することがお互いの思いのズレを解決につながることを教えていただきました。
後半も上級専門士の方とのディスカッションは大いに盛り上がりました。
ある方は、上司がみんなをどうまとめたらいいのか困っているように見えるのは、自分が上司に「こうであってほしい」という押しつけがあった、一緒に考えて行動することが大切ということがよくわかったと話されていました。
講義を振り返って
今回はケアする「働く人」がなぜもやもやし傷ついているのか、その原因にはメンバーを能力主義で判定していること、そして自分自身の影と向き合う必要があることを学びました。
参加した上級専門士の方々にはご自分の経験を交えながら発言していただき、活発なセミナーとなりました。
今後もケアする人が元気になれるようなセミナーを企画していきたいと思います。
参加した皆さまの感想
Aさん
講義を聞いてて痛感することだらけでした。自分が変わらないと、相手も変わらない。その通りだなと思うし、今回学んだことを取り入れていって、よりよい職場環境を作っていけたらと思います。
Bさん
ご講義受ける前は難しいテーマだなあと感じましたが、面白いご講義であっと言う間に過ぎました。自分を変えて職場の雰囲気も変えていきたいと思いました。そして、学生との関わり方も変えられそうです。怒らないで話を聞く。夫婦間でも行えそうですね。
【終末期ケア専門士】について
終末期ケアを継続して学ぶ場は決して多くありません。
これからは医療・介護・多分野で『最後まで生きる』を支援する取り組みが必要です。
時代によって変化していく終末期ケア。その中で、変わるものと変わらないもの。終末期ケアにこそ、継続した学びが不可欠です。
「終末期ケア専門士」は臨床ケアにおけるスペシャリストです。
エビデンスに基づいた終末期ケアを学び、全人的ケアの担い手として、臨床での活躍が期待される専門士を目指します。
終末期ケア、緩和ケアのスキルアップを考えている方は、ぜひ受験をご検討ください。