介護に関わるすべてのひとに届けたい「介護現場の光とは」~作家・看護師 藤岡陽子さんを迎えて~ 【学びLabo】|一般社団法人日本終末期ケア協会

介護に関わるすべてのひとに届けたい「介護現場の光とは」~作家・看護師 藤岡陽子さんを迎えて~ 【学びLabo】

2025.10.21 イベント

目次

2025年5月21日~5月26日、学びLabo 介護に関わるすべてのひとに届けたい「介護現場の光とは」~作家・看護師 藤岡陽子さんを迎えて~ を開催しました。

講師

小説家・看護師

藤岡 陽子 先生

介護現場をみなさんはどのくらい知っていますか。あまり知らない方にも物語を通して広く介護現場について知り、知識として吸収してもらえるように、現役看護師でもあり小説家でもある藤岡先生をお迎えしました。2055年には2.5人に1人が65歳以上になる時代が来ると言われています(藤岡先生調べ)。介護現場にスポットをあてて藤岡先生が執筆された小説「森にあかりが灯るとき」をもとに、介護現場を取り巻く現状についてお話ししていただきました。

小説のあらすじ

お笑い芸人の夢に挫折し、介護士として働くことになった主人公の星矢。

初めての夜勤の日に医療事故に遭遇し、さらにその原因が星矢にあるのではないかと施設長からも疑われてしまいます。

介護士としての将来に自信を失くし、仕事へのやりがいも感じられないまま過ごしていた星矢は、ある日意外な場所に連れていかれます。

夢に破れた介護士、信念が周囲に理解されない医者、過去に利用者の遺族から訴えられた施設長。それでも彼らがそこで働く理由とは。

前半の講義

前半の講義では以下についてお話いただきました。

・本の中で、ある男性の母親が介護施設入所中に病状の悪化があり亡くなってしまい、亡くなったのは施設の落ち度であると介護士を責め立てる場面があります。実際は介護士はその利用者の認知機能の状態に応じて対応していました。裁判になれば、看護師の場合、病院がかばってくれることが多いですが、介護士は施設が入っている保険会社にしか守ってもらえず辞めてしまうことがほとんどです。介護士もひとりの人間であり、自分の生活をする中で介護という仕事をしているということを忘れてはなりません。

・介護士になり1年目の主人公は介護の現場の常態化している様々なことについて、上司や周りに異議を唱えますが、中々受け止めてもらえない現状があります。介護の現場は脈々と受け継がれてきた慣習があり、変えていくことが難しい。変えたくない人たちを変えていくアプローチをしていかなければなりません。

延命至上主義は、医療現場や介護現場を逼迫している可能性があります。延命をすることだけがすべてではなく、延命をすることで生じるデメリットについて医療者のみならず医療者以外も知っていく必要があり、伝えていくことで意識が変わる可能性があります。

後半の講義

後半の講義では以下についてお話いただきました。

・家族などから掛けられる「ありがとう」や「よくしていただいている」などの感謝の言葉は介護する側にとってとても喜びになります。感謝の言葉気持ち介護される側介護する側にとっても気持ちのいいものです。

・人手不足の介護現場においてデジタル化を取り入れていくことで、ケアをする側もされる側も心地よく過ごせるようになる可能性を秘めています。

・現在も介護現場にロボットを取り入れているところがあります。そこに注目し注力することで変わっていける流れをつくっていくことが必要です。

講義を振り返って

今回は看護師でもあり小説家の先生に、介護の現場を取り巻く現状や未来についてお話ししていただきました。介護の現場の実際や介護施設の在り方、未来への希望について伺うことができました。また今回はインタビューで、働き方について病院や施設で働くことだけが医療の支えではなく、医療や介護の現状を言葉で伝えていくことも大切な役割であると感じることができ、非常に有意義なセミナーになりました。

参加した皆さまの感想

Aさん

『見えにくい介護施設の制度』については、常々感じておりました。
本当に利用者様から理不尽な暴言、暴力がある場面でも我慢しないといけない現実に、リフレッシュ休暇はありがたいな。

Bさん

病院勤務の看護師です。介護士さんとは共に働くことが多いですが、まだまだ低く見られがちだと思います。また教育も充分でないまま早々と独り立ちをさせているところも問題となっている気がします。やはり世間や国からももっともっと認められる存在になるべきだと思います。

Cさん

小説の中の状況があまりにもリアルすぎて頷くことばかりでした。何事もなく1日が終わることにほっとします。介護の現場は過酷で、理不尽な思いをすることも多々あります。このような小説を1人でも多くの人に読んでいただくことで介護の現場で働いている私たちの思いや頑張りを知ってほしいと切実にそう思いました。

第6回
終末期ケア専門士認定試験

受験申込期間

2025年3月28日~9月20日

試験実施日

2025年10月10日~31日

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【終末期ケア専門士】について

「終末期ケア」はもっと自由になれる|日本終末期ケア協会

終末期ケアを継続して学ぶ場は決して多くありません。

これからは医療・介護・多分野で『最後まで生きる』を支援する取り組みが必要です。

時代によって変化していく終末期ケア。その中で、変わるものと変わらないもの。終末期ケアにこそ、継続した学びが不可欠です。

 

「終末期ケア専門士」は臨床ケアにおけるスペシャリストです。

エビデンスに基づいた終末期ケアを学び、全人的ケアの担い手として、臨床での活躍が期待される専門士を目指します。

終末期ケア、緩和ケアのスキルアップを考えている方は、ぜひ受験をご検討ください。