緩和ケア医師が求めた、本当に必要な緩和ケアとは【学びLabo】
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2024年7月11日(木)、学びLabo「緩和ケア医師が求めた、本当に必要な緩和ケアとは」を開催しました。
今回、講師を担当していただく廣橋先生は、病院そして地域の訪問診療医として二刀流で活躍されています。ご自身が病気になったご経験や緩和ケア治療に関する内容を、SNSをはじめとするメディアや書籍で積極的に発信されています。
緩和ケア医として、患者の立場として緩和ケアに必要なケアは何かを教えていただきました。
講師
永寿総合病院 がん診療支援・緩和ケアセンター長
廣橋 猛先生
患者さんにとってがんのケアはどうあってほしいか
前半は以下について講義していただきました。
患者は先が見えないことに不安
頼りにできるひとの存在
患者は痛みを我慢している
前半の講義では、廣橋先生ががんとわかったきっかけは、がんで若くして亡くなった旧友が「どんなに忙しくても毎年受けて」と言ってくれた健康診断がきっかけになったそうです。診断を受け、入院、手術、そして現在に至るまでのご自身の思いを患者の思いと重ねて話していただきました。
患者は「先が見えない・わからない」から不安になります。正しい知識や情報は身を助けます。また、頼りにできるひとの存在は大切です。患者さんの中には、家族にも伝える事ができずに苦しんでいる方もいらっしゃいますが、できるだけ安心したサポートが受けることができるようなひとの存在を複数持つことが大切です。
がんの患者さんは手術やがんに伴う痛みなどさまざまな痛みを我慢しています。医療従事者に「痛い」と言ったときはもうすでに十分痛みを我慢している場合がほとんどです。痛みはじめや、痛みが起こりそうなときは早い目にレスキューを使用し、患者さんと一緒にタイミングを考えるのがよいと話されていました。
ACPは慣れ親しんだ環境での話し合いが大切
後半は以下について講義していただきました。
進行がん患者にとってACPは「どう死ぬか」ではなく「どう生きるか」
ACPは慣れ親しんだ環境で行い、長く継続してできる人が関わる
つらい人を支える自分もセルフケアを行う
後半は、進行がんを患った人が受けるACPについてもう一度考える時間となりました。
医療従事者側はACPを行い、早い段階で、病院での看取りか在宅での看取りかという情報を得て、次の行動につなげたいという思いが見え隠れする時がありますが、その行動は時に患者を不安にし、中には傷ついてしまう場合があります。ACPは「どう亡くなる」ではなく「どう生きるか」を考える機会です。
講義を振り返って
今回の講義は廣橋先生自身の闘病経験から得たことを踏まえて、患者さんにとっての本当の緩和ケアとは何かを学ぶ内容でした。先生の経験は患者としての本当の気持ちがリアルに伝わる内容であり、患者さんが抱えている「言いたいけれど、言えない気持ち」があることをどれだけ医療従事者が察し、耳を傾け、治療に伴う辛さや悩みに寄り添うことの大切さを改めて学ぶ事ができました。
また、ケアを提供する人こそ、セルフケアを行う必要がある、そして自分に余裕があるからこそケアを提供することができると優しく励ましてくださった先生の言葉が印象的でした。
先生は執筆活動やSNSでも、「生きる」をテーマに緩和ケア医として積極的に発信活動をされています。患者さん目線を忘れないように日々のケアを考えていくことが重要です。
参加した皆さまの感想
Aさん
自分が当事者になると痛みや苦痛を我慢してしまうのだなと気付きました。 支える私達の気遣いやひと声が大切だと感じました。
Bさん
察して欲しかった患者と発信して欲しかった医療者。すれ違いもあるけれど、せめて寄り添うことができるようになりたいです。 不安を煽らない言葉と話し方が大事なことだと学びました。
Cさん
多くの患者さんは我慢や遠慮などから、なかなか本音の部分を出さないことがあると思います。こちらから察して声をかけることによって、それを表出するキッカケになるということを再認識しました。
【終末期ケア専門士】について
終末期ケアを継続して学ぶ場は決して多くありません。
これからは医療・介護・多分野で『最後まで生きる』を支援する取り組みが必要です。
時代によって変化していく終末期ケア。その中で、変わるものと変わらないもの。終末期ケアにこそ、継続した学びが不可欠です。
「終末期ケア専門士」は臨床ケアにおけるスペシャリストです。
エビデンスに基づいた終末期ケアを学び、全人的ケアの担い手として、臨床での活躍が期待される専門士を目指します。
終末期ケア、緩和ケアのスキルアップを考えている方は、ぜひ受験をご検討ください。