緩和ケアに携わる看護師の役割~価値観や生き方を尊重した支援~|一般社団法人日本終末期ケア協会

緩和ケアに携わる看護師の役割~価値観や生き方を尊重した支援~

2021.4.16 JTCAゼミ
緩和ケアに携わる看護師の役割~価値観や生き方を尊重した支援~

目次

身体的な面だけでなく精神的な面でのサポートも重要

緩和ケアに携わる医療従事者は、患者の生命を脅かす疾患における痛みや苦しみを和らげ、その人らしい人生を送れるようにお手伝いをする存在です。
緩和ケアと聞くと患者の身体的苦痛に対する薬物治療が中心と思われがちです。
しかし身体的苦痛だけでなく、精神的苦痛、社会的苦痛、スピリチュアルな苦痛に対する治療やケア、支援を行っていくこと、また患者だけでなくその家族の精神的サポートを行っていくことも重要になってきます。

緩和ケアにおけるコミュニケーション

病期により異なることもありますが、生命を脅かす疾患をもつ患者は常に現実的な「死」と向かいながら生きています。
患者の治療やケア、支援を行う上でその人の持つ苦しみや悩み、価値観は人それぞれ異なるため、個別性の治療やケアを行っていくためにも日々のコミュニケーションは重要になります。
緩和ケアは多職種のチームで関わることが多いですが、その中でも看護師は日々の関わりから患者・家族の思いや考え方、今までの人生観などを聴くことでその人らしさを引き出していくことができる存在ではないでしょうか。
寄り添うコミュニケーションをしていくことで患者・家族の納得のいく意思決定ができるよう支援していくことが大切なのです。

よりよいエンド・オブ・ライフのために

近年、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の概念を踏まえた研究や取り組みが普及してきています。
ACPとは「将来の意思決定能力の低下に備えて、患者・家族と医療従事者があらかじめ話し合う自発的なプロセス」と定義され、患者・家族のエンド・オブ・ライフに関する希望が表現され、尊重されることを目的としています。
ACPを行うことで患者の意向を尊重し、質の高いケアを提供することができます。しかし、ACPを行う時期が早すぎると不明確、不正確なものになる場合があり、また遅すぎても適切ではないため、ACPを進めていくタイミングが大切になります。
ACPは患者の意向を尊重することができる関わりですが、中には話し合いそのものが患者・家族にとって辛い体験になる可能性もあり、すべての患者・家族に実施することが難しい場合もあります。
また、患者・家族と医療従事者の信頼関係がないと進めていくことはできません。
ACPは患者・家族と医療従事者間の信頼関係を築いたうえで、精神的サポートを行っていくことも重要になってきます。

患者の価値観や生き方を尊重した支援

人生の最終段階にある患者・家族の苦しみや悲しみは計り知れません。
そうした思いを傾聴してそばで寄り添うことも治療やケアと同様に大切なことではないでしょうか。
そのような関わりが信頼関係につながり、患者の価値観や生き方を尊重した最善の治療やケア、支援を提供していくことができるのです。