誤嚥性肺炎を繰り返し、痰が詰まるときの対応とは?判断が難しいケースで考える視点
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はじめに
誤嚥性肺炎を繰り返している患者さんで、自己排痰が難しく、急にSpO₂が低下してしまう。
体位ドレナージやタッピングを行っても反応が乏しく、吸引をしても「すっきりしない」
こうした場面に、対応の難しさを感じた経験のある方も少なくないのではないでしょうか。
本記事では、
日本終末期ケア協会主催オンラインセミナー「学びLabo」で実際に寄せられた質問に対し、
理学療法士・秋保光利先生が後日あらためて回答してくださった内容を、
解釈や要約を加えず、そのまま掲載します。
今回の回答について
本記事は、
セミナーに寄せられた質問に対し、
理学療法士・秋保光利先生が後日あらためて回答してくださった内容をもとに構成しています。
誤嚥性肺炎や痰詰まりといった状況は、
急性期・慢性期・終末期を問わず、多くの現場で判断に迷いやすいテーマでもあります。
ご注意
本記事で紹介する内容は、考え方や視点の共有を目的としたものです。
実際の対応にあたっては、
患者さんの状態や医師の指示、所属施設・地域のルールを踏まえて判断してください。
質問①
誤嚥性肺炎を繰り返す寝たきりの患者様で、
自己排痰できず、急にSpO₂が低下してしまいます。
体位ドレナージやタッピング等しても咳嗽反射もなく、吸引しても中々すっきりしません。
どうアプローチしたら良いか悩んでいます。
回答
難しい状況ですね。
私も苦慮することが多いので状況が目に浮かびます。
まず、本当に 気道内分泌物(痰)が本当に多いのか、
つまり肺、気管支内の分泌物なのか?
それとも唾液などの垂れ込みが多いのか?
で対応が変わってくるかと思います。
考えられる対応
【気道内分泌物(痰)が多い場合】
質問者が対応されているような患者さんに、
体位変換や気道クリアランス法や咳嗽介助などを組み合わせても
完全に気道内分泌物をなくすことは難しいことが多いです。
また咳嗽反射もないとなると、
吸引チューブでの吸痰もかなりのスキルが必要になるかと思 います。
どこまで気道内分泌物を除去する必要があるのかの見極めをした方が良いでしょう。
患者さんが望むなら
輪状甲状軟骨穿刺針(ミニトラックやトラヘルパーと言った商品)を留置すれば、
気道内吸引が確実になります。
また急激なSpO2低下はおそらく気道内分泌物による閉塞です。
痰詰まりと言う状況です。
これは気道管理ができていないということになります。
これも早々に医療者間で方針を決定しておく方が良いと思います。
【唾液の誤嚥が多い場合】
誤嚥絵性肺炎を繰り返しているという情報があるので、
そこだけを切り取ると唾液は誤嚥していると思われます。
それがメインで気道閉塞が時折起きているのであれば、
口腔内持続吸引が功を奏する可能性があります。
もちろん誤嚥が主な原因の気道閉塞でも、 輪状甲状軟骨穿刺針留置は効果があります。
以上、どちらが主な原因かで対応を変えても良いかと思います。
しっかり評価いただき、 対応してみてはいかがでしょうか。
輪状甲状軟骨穿刺針留置は侵襲性の高い方法です。
また感染管理なども関わります。
今後の方針を多職種で検討してみてはいかがでしょうか。
質問②
リハとはずれちゃうかもですが、
抗コリン薬の点眼を口に入れると痰が減ると聞いたのですが、
在宅でそういった方法をされていることもあるのでしょうか?
回答
私は聞いたことがありませんし、やったこともありません。
目的外使用は避けた方が良いと思います。
その方法がすでに患者さんにやられていて、
常態化しているのであれば、そのような方法を関係する誰かが指示をしたのかもしれません。
訪問診療医などに確認してはいかがでしょうか。
抗コリン薬は自律神経の「副交感神経」の働きを抑制します。
そのため交感神経の働きが優位になります。
そのため痰の量が減るけど、粘稠度が増し、気管支線毛運動を抑制します。
見た目では痰が減ってよかったように見えますが、
気道に痰が詰まり無気肺となるリスクは高くなる可能性もあります。
また唾液等の分泌も減ります。
誤嚥のリスクも減るのでしょうか?
どちらにしても私はあまりお勧めできる方法ではないと思います。
もし気道内分泌物の量を減らしたいのであれば、別の方法を取られてはいかがでしょうか。
おわりに
誤嚥性肺炎や痰詰まりへの対応は、
「何かをすれば必ず良くなる」という単純な問題ではありません。
分泌物の性質や原因を見極め、どこまで介入するのか、どの方法を選択するのか。
判断に迷うからこそ、多職種で共有しながら方針を考える視点が重要であることが示されています。
本記事は、
セミナーに寄せられた質問に対し、
理学療法士・秋保光利先生が後日あらためて回答してくださった内容を、
内容を変更せず掲載しています。
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