緩和ケアに携わる看護師の役割~疾患や症状に対するスキル~|一般社団法人日本終末期ケア協会

緩和ケアに携わる看護師の役割~疾患や症状に対するスキル~

2021.4.2 JTCAゼミ
緩和ケアに携わる看護師の役割~疾患や症状に対するスキル~

目次

緩和ケアとは?

終末期におけるケアの中の一つに「緩和ケア」があります。
緩和ケアについてはWHOが2002年、「生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである」と定義しています。
「緩和ケア」と聞くと日本ではがん治療の終末期で行われるイメージが多いですが、終末期に限ったケアではなく、生命を脅かす疾患に罹患した時から対象になります。心不全やCOPD、ALSなど徐々に病状が進行していく疾患も対象となるのです。

緩和ケアの目的

厚生労働省の統計で令和元年死因疾患の順位は悪性新生物、心疾患、老衰となっており、悪性新生物が全体の約27%を占めています。他にも脳血管疾患や肺炎、認知症など様々な死因疾患があります。
疾患により出現する症状は様々ですが、疼痛、呼吸困難、消化器症状、全身倦怠感などがみられます。緩和ケアはそれらの苦痛やつらい症状の予防・緩和を目的としており早期から行うことも可能なのです。
2010年にアメリカで行われた研究によると、がん患者に早期の緩和ケアを行うことでQOLが改善しただけでなく余命を延長することができたという論文が発表されました。
緩和ケアを行うのは「症状が末期になってから」というイメージが多いのが現状です。しかし、緩和ケアを行うことで余命の延長の可能性はありますが、余命が短くなる可能性はほとんどありません。むしろ早期から緩和ケアを行うことが患者の症状緩和やQOL向上につながる可能性が高いといわれています。

症状緩和のためのケアとは?

疾患による症状には様々なものがありますが、緩和ケアが対象としている症状の一つにある苦痛に「全人的苦痛」があります。
ソンダースは末期がんの患者が経験する苦痛を全人的苦痛と呼び、①身体的苦痛、②精神的苦痛、③社会的苦痛、④スピリチュアルな苦痛の4つに分類しています。症状緩和をしていく中で、医師・看護師だけでなく、薬剤師、栄養士、理学療法士、ソーシャルワーカーなどチーム医療のスタッフとも連携を行うことで、様々な視点から緩和ケアを行っていくことができるのです。
また、看護師の役割として日々患者・家族と関わっていく中で、身体的なケアだけでなく、心のケアも重要になってきます。日々の関わりの中で、患者・家族の思いを傾聴していくことも大切になります。ケアは一人で行うものではなくチームで行い、スタッフ間で情報共有やカンファレンスをしていくことが次のケアにつながっていくのです。

引用・参考文献
終末期ケア専門士公式テキストp22~35
https://nejm.jp/abstract/vol363.p733 転移性非小細胞肺癌患者に対する早期緩和ケア

データ参考https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei19/dl/10_h6.pdf 厚生労働省死因順位構成割合