緩和ケアにおける課題

NEWS

緩和ケアにおける課題

JTCAゼミ

緩和ケアの発展

緩和ケアの歴史を見ると、1973年に精神科医の柏木医師によって大阪市の淀川キリスト教病院で末期がん患者に対するチームアプローチが始まり、1981年には聖隷三方原病院に日本初の独立型ホスピスが誕生した。また、1990年診療報酬に「緩和ケア病棟入院料」が、2002年に「緩和ケア診療加算」が設定され、少しずつ緩和ケアが普及しはじめた。その後、2006年に「がん対策基本法」が成立し、がん診療連携拠点病院への緩和ケアチームの設置が指定要件とされ、緩和ケアが大きく普及することとなった。


緩和ケアのイメージ

日本において緩和ケアと聞くとがんをイメージすることが多いように感じる。これは、日本において緩和ケアはがんとともに歩んできた歴史があることが大きい。さらに、これまで、緩和ケア診療を行うことで診療報酬を算定できる疾患が、悪性腫瘍および後天性免疫不全症候群に罹患している患者に限られていたことも要因の一つと考えられる。


2018年度診療報酬改定

ところが、2018年度の診療報酬改定では、緩和ケア診療の対象疾患として、この2疾患に加えて新たに「末期心不全」が追加された。
厚生労働省発表の「人口動態統計の概況」によると、2019年の死因別死亡総数のうち、心疾患(高血圧症を除く)は20万7714人で、死因別死亡数全体の15%を占めており、悪性新生物に次ぐ2番目に多い数字だった。また、心疾患の死亡数内訳をみると心不全は8万5565人と心疾患の中で最も多く、心不全による死亡数が多いことが分かる。


今後の課題

がん患者の場合、体調やADLが保たれた状態が最期まで続く場合が比較的多く、最期の1~2か月に急速に身体機能が低下することが多い。一方、心不全患者の場合、急性増悪期と寛解期を繰り返しながら徐々に体調やADLが低下し、最期は急速に悪化することが多い。また、予後予測が困難で、時に突然死もみられる。このように、がん患者と心不全患者とでは終末期に至る経過が異なる。さらに、緩和ケアはがんを中心に発展してきたという歴史があり、心不全に対する緩和ケアの治療・対応の標準化がなされておらず、実績も少ない。苦痛症状は生命の質、生活の質の低下につながる。年間死亡者数は、2015年に129万人であったが、2040年には167万 人に達すると推計されており、こうした多死社会を迎える中で、心不全の緩和ケア提供体制を整備することは重要である。



引用・参考文献:
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei19/dl/11_h7.pdf