高齢者の栄養障害②
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低栄養とサルコペニア・フレイルの関係
高齢者の身体機能の低下には、加齢によって起こる低栄養が関連している。低栄養になると、活動に必要なエネルギー源、筋肉量や筋力、身体機能の維持に必要なタンパク質が不足し、筋力の低下、易疲労性、身体機能の低下につながっていく。
高齢者にみられることが多い「サルコペニア」も低栄養に大きく関係している。サルコペニアとは、筋肉量が低下し、筋力または身体能力が低下した状態のことをいう。
サルコペニアには加齢によるもの(一次性サルコペニア)と、不活動・疾患・低栄養などによるもの(二次性サルコペニア)に分けられる。低栄養が原因で筋肉量が減少しサルコペニアがおこる場合があり、サルコペニアが進行すると、運動・身体機能に障害が生じたり、活動低下や転倒のリスクが高くなり、フレイル(加齢とともに運動機能や認知機能などが低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響で生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態)が進行し、介護が必要な状態になる可能性が高くなる。低栄養が発端となって、高齢者の運動機能、身体機能を低下させるばかりでなく、生命予後やADLが低下してしまうこともあり、適度な運動、栄養状態の改善、規則正しい生活習慣をおくることがサルコペニアの予防につながるのである。
疾患と栄養障害の関係
高齢者は、身体機能低下により、疾患に対する反応が弱くなり、症状が出ないことも多く、発見しにくい特徴がみられる。そのため、知らないうちに症状が進行している場合がある。ほかにも、高齢者の疾患には合併症も多く、複数疾患をかかえたり、疾患の治癒遅延や慢性化などの特徴も見られる。
高齢者を含む成人の栄養障害の原因として、急性疾患(≒侵襲)、慢性疾患(≒悪液質)、社会生活環境(≒飢餓)があげられる。疾患(≒炎症)の重症度と低栄養は関連しており、nutritionDay(入院患者の栄養状態を把握する国際的なアンケート調査)によると頻度は30~50%と高い数値を示している。
成人の場合、疾患や全身状態により異なる場合もあるが、低栄養に対する治療をおこなえば改善していく可能性は高い。しかし、高齢者は、重篤な低栄養状態になるまで自覚しにくいこともあり、また加齢に伴う身体機能低下による低栄養も関係しているため、栄養状態の改善が困難な場合もある。
低栄養は疾患も大きく関わることもあるため、高齢者の栄養評価においてはBMI、体重減少、摂取量、体組成などの身体情報に加えて、疾患がある場合は主病名の治療経過や併存疾患の管理状態についても確認することが重要になる。