高齢者の栄養障害①
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栄養障害とは?
「さまざまな程度の過栄養または、低栄養、および炎症反応の複合による亜急性または慢性の栄養状態で、体組成の変化と機能低下をもたらすものを指す。」と定義されている。
摂取する食べ物の偏りや消化管疾患などで食べ物の消化や栄養吸収がうまくいかず、必要な栄養素と摂取する栄養素のバランスが崩れるため、身体機能に悪影響を及ぼしたり、機能不全を起こしてしまうことがある。栄養障害ときくと「低栄養」をイメージしがちであるが、実は「過栄養」も含まれているのである。
高齢者の栄養障害「低栄養」
高齢者の栄養障害というと「過栄養」より「低栄養」が多い。
低栄養の症状には、「体重減少」、「骨格筋の筋肉量や筋力の低下」、「活気がない」、「傷や褥瘡が治りにくい」、「下半身や腹部がむくみやすい」などがある。
高齢者の低栄養の主な原因として、日常生活においては高齢者夫婦世帯や独居世帯による孤食や経済的問題、咀嚼・嚥下などの口腔機能の低下から摂取する食べ物が偏るため、必要な栄養素の不足、味覚・嗅覚の低下により嗜好の変化がおきてしまうが、疾患などによる食事制限があるため食欲がわかずに食事量が減少する、食事量や活動量の減少により消化管の動きが悪くなり、食欲の低下につながるなどが挙げられる。また、精神障害(認知症やうつなど)により、食欲低下から低栄養につながることもある。
食事摂取量が減少することにより、体力・筋力低下→ADL低下→転倒のリスクの増大につながり、創傷治癒の遅延や寝たきりになるリスクが高くなることもある。そうなると更に栄養不良の状態が悪化し、結果的に低栄養の進行を招く悪循環に陥る可能性が高くなる。
低栄養は自覚しにくい
低栄養の診断や栄養状態の評価には身体情報(身長、体重、BMIなど)やSGA(主観的包括的評価)、MNA®(簡易栄養状態評価表、65歳以上の高齢者の栄養状態を評価するためのツール)、血液データなどが使用されることが多い。高齢者の栄養障害は通院や入院している場合は気付くことも多いだろう。しかし、栄養障害は自覚しにくく、自分では気が付かないうちに進行するため、外部との接触が少ないと栄養状態が悪化してしまうことも場合も多い。
栄養障害のケアと予防
高齢化社会が進む中で高齢者夫婦世帯や独居世帯も増加してきている。そのような状況で栄養障害のケアや予防の対策として「1日3食食事をする」、「バランスのとれた食事を食べる」、「デイサービスなど地域支援事業などに参加し、ほかの利用者と一緒に食事をする機会をつくり食事の環境を変える」、「必要に応じて栄養補助食を利用する」ことが低栄養の改善につながる。しかし、簡単に実践することが困難な場合もある。家族や周りのサポートにより、その人に合った食生活を確立させていくことが栄養障害のケアや予防をおこなうことができるのである。