「自分らしく生きる」を支えるメイクセラピーとは
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メイクセラピーとは
メイクセラピーという言葉を聞いたことはありますか?
「メイクセラピー」とは化粧療法のことで、「コスメティックセラピー」ともいいます。
化粧療法は、現段階では「治療法」としての確立には至っていません。
しかし、化粧による心理的・社会的・生理的効果を活用してQOLの向上を目指すケア手法として今注目されています。
メイクセラピーがもたらす科学的な効果とは
近年その研究は進み、化粧がもたらす科学的な効果が注目されています。 2021年の岡山大学の研究グループの発表によれば、女性認知症患者さん36名を対象にした臨床研究にて、化粧直後から情動機能が有意に改善したことが示され、化粧療法の普及が期待されています。
メイクセラピーがもたらす効果
化粧療法は、大きく心理的側面・社会的側面・生理学的側面に効果をもたらします。
【心理的側面】
▶自己肯定感が増す
▶安心感を得られる
▶リラックス効果
【社会的な側面】
▶積極的になれる
▶行動的になる
▶人との関わりが生まれやすい
▶他者への関心が高まる
▶コミュニケーションの活性化
【生理学的側面】
▶手を動かすことでリハビリ効果に繋がる
▶顔のマッサージで唾液の分泌を促進
▶免疫機能の向上や口腔機能の維持・向上
などがあります。
終末期医療にも活かせるメイクセラピーとは
医療の現場では
医療の現場では、治療が優先されてしまうのが現状です。病院や施設に勤めていると、患者さんにメイクを施すのはエンゼルケアくらいではないでしょうか。
しかし、そもそも“死を迎えたときにしか化粧をしないこと自体おかしいのでは?”と思ったことはありませんか。療養中でも産毛処理や化粧、スキンケアなどにもっと気を配ってもいいのではないでしょうか。それは女性だけでなく、男性も同じです。
患者という枠組みにはめ込むのではなく、それぞれの個性や生き方を尊重するケアによって、人は前向きになれ、QOLの向上に繋がります。
メイクセラピーでの体験談
こんな体験談がありました。
施設に入所している90代のご夫婦。当初は「いい歳して、化粧なんてやめておけ」と言っていたご主人。しかし、施術を重ねるうちに、妻がどんどん明るくなっていき、「こんなに生き生きしている姿は最近みていなかった。今日もよろしくお願いします」と言われるようになったそうです。
このようにメイクセラピーは周囲にも影響を及ぼします。
「最期まできれいだった」「最期までその人らしく人生を終えた」と思えたなら、残された家族の悲しみを癒すグリーフケアにも繋がるのではないでしょうか。
最後に
現段階では治療的な効果は確立されていませんが、患者さんのこれまでの人生や価値観を伺いながら行うメイクセラピーには、表面上の「綺麗になった」だけではなく、自己肯定感の向上やリラックス効果、安心感を得ることに繋がり、塞ぎ込んでいた方も他者への関心が高まることでコミュニケーションの向上、リハビリ効果、免疫力の向上など、多くの効果が期待されています。
メイクセラピーを通して、患者さんが「最期まで自分らしく生きる喜びを支えていく」一助となることができたらいいですね。
参考文献
メイクセラピーを介護・医療の現場に普及し 「最期まで自分らしく生きる」ためのケアを
HELPMAN JAPAN
press20210318-3.pdf (okayama-u.ac.jp)
岡山大学
メイクセラピストが教える!医療と介護の新分野「セラピーメイク」の可能性
マナトピ (u-can.co.jp)
化粧療法(メイクセラピー)とは?最新の研究報告と実施の注意点
日本ケアコミュニケーションズ (care-com.co.jp)
わが国の医療現場におけるメイクセラピーの応用に関する文献的研究
カルデナス 暁東/西尾 ゆかり/福井 奈央/田中 克子/森脇 真一/末原 紀美代
【終末期ケア専門士】について
終末期ケアを継続して学ぶ場は決して多くありません。
これからは医療・介護・多分野で『最後まで生きる』を支援する取り組みが必要です。
時代によって変化していく終末期ケア。その中で、変わるものと変わらないもの。終末期ケアにこそ、継続した学びが不可欠です。
「終末期ケア専門士」は臨床ケアにおけるスペシャリストです。
エビデンスに基づいた終末期ケアを学び、全人的ケアの担い手として、臨床での活躍が期待される専門士を目指します。
終末期ケア、緩和ケアのスキルアップを考えている方は、ぜひ受験をご検討ください。