神経難病ケアと終末期ケアの“本質”は同じ(3)|一般社団法人日本終末期ケア協会

神経難病ケアと終末期ケアの“本質”は同じ(3)

2020.4.1 JTCAゼミ

目次

神経難病と終末期ケアは重なる部分が多い

今回の訪問を通して、神経難病と終末期ケアは、治療の目標は違うけれど、ケアの本質では通じるところがたくさんあると思った。




『できることを支える』

治療が困難である進行性の疾患は、徐々に身体機能が低下していく。その中でも、残された機能に目を向けて、できる機能をどう使えばいいか、それを活かすには何が必要かを考える。できないことが増えていく中であっても「できることは何か」に焦点をあててケアを組み立てていく。それは、マニュアル通りには対応できないからこそ、専門職としての力が発揮できる部分である。




『本人がどう過ごしたいのか』

本人の好きなこと、大切にしている時間、やり続けたいと思っていること、これから病気が進行していく中でどんな生活を過ごしたいと思っているのかを知ることからケアはスタートする。自分の過ごし方を自分で決めることができる。医療・介護者がよき理解者、伴走者として寄り添い続けること、患者がそう感じられる関係性を築いていくこと、それは神経難病のケアに限らず、医療・介護の原点である。




『専門職としてプロであることを認識する』

ひとりの患者には多くの専門職が関わる。自施設以外の方と連携をとることも多いだろう。だからこそ、お互いの専門性・職域を理解すること、自分の与えられた職務に努力し続けること、自分が大切にしている価値観を認識することが求められる。
同じ専門職であっても、大切にしている価値観や得意分野は違う。その違いをチームに活かすことのできる視野の広さと柔軟性が専門職としてのプロだと思う。





最後に

下志津病院のスタッフは、誰もが、「専門職として日々大切にしていること、チームの一員としての自分の役割」を力強く私に話してくださった。みなさん100%のパワーで私に語ってくださる。そしてその思いはしっかりと私の胸にも届いた。神経難病のケアを伝えたいという意志が伝わってきた。
もちろん、日々のなかで抱えるジレンマや苦悩もある。しかし、それらを「解決すべき課題」として冷静に見据えておられた。
帰り道、「いい病院だったな」と温かい気持ちになると共に、自分の背筋をピンと伸ばしたい気分になった。
この度、当協会の訪問を快諾していただき、お力添えいただきました独立行政法人国立病院機構下志津病院の皆様に心より感謝申し上げます。