神経難病ケアと終末期ケアの“本質”は同じ(2)
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行動の自由を守るために
患者の行動の自由をサポートすると、転倒や衝突など院内でのリスクが増えるのは当然のことである。そこで、下志津病院では、筋ジストロフィー病棟の患者に「車椅子運転テスト」を行っている。リハビリ専門職が主体となってテストを行い、クリアすれば晴れて車椅子の運転許可が得られるのである。
病院の中には、車いすを操作している人が安全確認をしやすいように、廊下にミラーをたくさん設置していた。院内を歩いているときには気がつかなかったが、実際に車椅子の操作をしたときに、このミラーの効果を実感した。それにしても、皆さんよくあんなに上手に運転ができるなと思う。私は、まっすぐ進むことすら難しかった。でも乗り心地は本当に良かった。車いすの制限速度は、院内4km/時と決まっており、その速度しか出ないように理学療法士さんが設計してくださっているそうだ。呼吸器を置く架台の取付け、操作しやすいレバーの工夫など、まさにオーダーメイドである。
医師は診断や治療、看護師はケア全体のマネジメントと家族のケア、理学療法士はリハビリと能力に応じた移動用具の微調整、作業療法士はリハビリとナースコール・パソコンなど生活用具の微調整、ほかにも多くの業種の方がサポートし、情報を共有しながら患者の生活をサポートしていた。
チームの力を引き出すヒント
このように、患者の生活を支えるには、多職種連携によるサポートが欠かせない。医師、看護師、介護士、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、臨床心理士、臨床工学技士、ボランティアなど。事務の方々も同じチームの一員として、イベントの企画・運営、地域との連絡窓口に携わっておられる。まさにワンチーム・ケアである。
このチームでは、医師は、各専門職に専門領域のケアプランを信頼して委ねている。その思いをどの職種の方も感じ取っている。それぞれの専門職が知識と経験を活かし、自由な発想で行動できるからこそ、本当にプロフェッショナルな仕事をしているのだ。挑戦のしがいがある。『自由だからこその責任』、このチームの強さはここにあると思う。
しかし、今の社会では、この『信じて委ねる』、『自由だからこそ責任が生まれる』場面が少なくなっている。医療・介護業界も同じではないだろうか。チームの力を引き出すヒントはここにある。