デルマトームをわかりやすく徹底解説
- 目次
1.デルマトームとはなにか
2.まずは脊髄神経を知ろう
3.デルマトームの活用方法
1.デルマトームとはなにか
『皮膚が侵害刺激を入力する脊髄レベル』
『脊髄の各髄節は特定の皮膚領域の感覚を支配しているため、脊髄神経による皮膚の分節的支配様式』
『脊髄神経が支配している皮膚感覚の領域を模式図化したもの』
デルマトームは、様々な表現で説明されています。結局、デルマトームって何?と聞かれて、うまく説明することは難しいのではないかと思います。
デルマトームとは簡単に言うと、どこの脊髄神経で障害が起こっているのかを教えてくれる「地図」のようなものです。まずはデルマトームへの理解の第一歩として、脊髄神経を知ることが重要です。
2.まずは脊髄神経を知ろう
デルマトームを理解するためには、まずは「脊髄神経」を少しだけ理解することが最も近道だと思います。脊髄神経は、脊椎の椎間孔から1対ずつ出ています。頸椎の間から出ているのが頸神経(8対)、胸椎の間から出ているのが胸神経(12対)、腰椎の間から出ているのが腰神経(5対)、仙椎から出ているのが仙骨神経(5対)、第1尾椎と第2尾椎の間から出ているのが尾骨神経(1対)です。
https://img.kango-roo.com/upload/images/shorinsha/noushinkei/12/fig_12_1.png
それぞれの神経の頭文字をとって、頚神経(cervical nerve)=C、胸神経(thoracic nerve)=T、腰神経(lumbar nerve)=L、仙骨神経(sacral nerve)=S、尾骨神経(coccygeal nerve)=Coと表記されます。このアルファベットに神経の番号を付けると・・・
C1〜C8(第1頚神経〜第8頚神経)
T1〜T12(第1胸神経〜第12胸神経)
L1〜L5(第1腰神経〜第5腰神経)
S1〜S5(第1仙骨神経〜第5仙骨神経)
上記のようになり、デルマトームの図の中でよく見るアルファベットと番号になります。
どの神経がどこの皮膚感覚の領域を支配しているのかは、覚えるしかありません。がんばりましょう!
https://sakurahanoi.com/uploads/images/Untitled.jpg
3.デルマトームの活用方法
デルマトームは、前述のとおり脊髄神経が支配する皮膚感覚の領域のことですので、実際に痛みや痺れが生じている部位から、どの脊髄神経が障害されているのかを知ることができます。では、実際にどうやって活用すればよいのでしょうか。
基本的にデルマトームは、痛みのアセスメントを行う際に用いることが多いと思います。特に神経障害性疼痛のアセスメントで活躍します。ここでは、事例を使って解説していきます。
【事例】Aさん、80代、男性。胃がんの終末期。自宅療養していたが、数日前より腰痛が出現し、自分で動くことが困難になったため入院となった。入院時、腰痛はズキズキとした痛みで、寝返り時などの体動時に増強している。すでに下肢は麻痺しており、痺れが出現していた。
Aさんの下肢の痺れは、1週間前頃より徐々に進行しており、腰痛は約1か月前から出現していました。市販の痛み止めを服用して効果があったため、かかりつけ医には話していいませんでした。腰痛は腰部に限局した体動時痛で、下肢の痺れは下肢前面では鼠径部あたりから下腿部、第一足指まで、後面では大腿部外側のみであることを確認しました。
以上のアセスメントとデルマトームを照らし合わせると、
①第1腰神経~第5腰神経の範囲に何らかの障害がある可能性がある
②腰痛の痛みの特徴が限局した体動時痛であることから骨転移を疑う
この2点から、Aさんの痛みと痺れの原因は
「L1~L5の骨転移に伴う神経への圧迫もしくは浸潤」の可能性があると判断できます。
このアセスメントを元にCT検査や高カルシウム血症の有無などを精査し、骨転移と診断されました。すでに麻痺は進行していましたが、疼痛緩和目的で姑息的放射線療法が行われ、体動時痛は緩和することができました。
このようにデルマトームは痛みのアセスメントだけでなく、治療にも役立てることができます。みなさんもぜひ臨床で効果的に使ってみてください。
【終末期ケア専門士】について
終末期ケアを継続して学ぶ場は決して多くありません。
これからは医療・介護・多分野で『最後まで生きる』を支援する取り組みが必要です。
時代によって変化していく終末期ケア。その中で、変わるものと変わらないもの。終末期ケアにこそ、継続した学びが不可欠です。
「終末期ケア専門士」は臨床ケアにおけるスペシャリストです。
エビデンスに基づいた終末期ケアを学び、全人的ケアの担い手として、臨床での活躍が期待される専門士を目指します。
終末期ケア、緩和ケアのスキルアップを考えている方は、ぜひ受験をご検討ください。