「看取り」をひとりにしないために〜終末期病棟の看護師から協会設立へ〜|一般社団法人日本終末期ケア協会

「看取り」をひとりにしないために〜終末期病棟の看護師から協会設立へ〜

2025.4.25 協会情報
「看取り」をひとりにしないために〜終末期病棟の看護師から協会設立へ〜

目次

一人の看護師が立ち上げた学びの場

「どうして私は、こんなに無力なんだろう。」

これは、日本終末期ケア協会の創設者である、ひとりの看護師が語った言葉です。
病室で患者さんを見送り、ご家族と涙を流すたびに、私は何度もそう思ってきました。

特別な肩書きもなければ、特別な力もない。
でも、目の前のいのちに向き合う日々の中で、「もっと学びたい」「もっと寄り添いたい」という想いだけは揺るぎませんでした。

誰も信じてくれなかった。それでも、不安はなかった。

創設者がこの協会を立ち上げたとき、まわりの多くの人は驚きました。

「そんな仕組み、本当に作れるの?」

「うまくいかなかったら、いつでも看護師に戻っておいでね。」

そんな言葉は優しさでもあり、同時に「信じてもらえない」という切なさもありました。
でも、自身の中に「できないかもしれない」という不安は不思議と一度も湧かなかったのです。

あったのは、ただひとつ。

早くつくらなければ間に合わない。絶対に困っている人がいるはずだ」という、強い目的意識だけでした。

「看取り」をひとりにしないために〜終末期病棟の看護師から協会設立へ〜

育児と仕事。どちらも諦めたくなかった。

看護師として働きながら、子育てをする日々。
新しい知識を学びたくても、本だけでは限界があり、子育て中は時間もお金も足りませんでした。

そしてなにより、現場ではマニュアルが通用しない場面がいくつもありました。

「患者さんも、ご家族も、同じ状況なんて一つもない。」

一回限りのケアの連続、これが現場です。
だからこそ、現場に立つ看護職・介護職・医療従事者たちが、それぞれの現場に合った“寄り添い”を学べる場所が必要だと感じたのです。

立ち止まらず、ひたすら走った1年半

立ち上げからの約1年半は、怒涛の日々。
公式テキスト制作、試験準備、交渉、システム制作、HP制作…なにもかもはじめて。

「どうやってやればいい?」「理解してもらえる?」そんな孤独も、気づけば忙しさにかき消されていました。

そして迎えた2020年、第1回 終末期ケア専門士の認定試験。
そのとき全国から、さまざまな職種・立場・経験値の方が挑戦してくれました。

はじめての試験で合格者は1516人。思いがけない反響でした。
合格通知の封を閉じながら、あらためて感じました。

同じ想いを持つ仲間が、全国にこんなにもいるんだ

現場で抱えてきた葛藤が、そして、突っ走った1年半が、ようやく“スタート地点”につながったと確信した瞬間でした。このときを一生、忘れることはありません。

「看取り」をひとりにしないために〜終末期病棟の看護師から協会設立へ〜

看取りの現場は、学びの機会があまりにも少ない

看取りの現場では、プライバシーへの配慮から、他者の実践を見る機会が極端に少ないという現実があります。人の真似をして真似ぶ、ということが容易ではないのです。

そんな中でも、看取りのケアには「人と向きあう力」が求められます。

そこで協会では、誰でも、どこにいても、いつでも学べる環境を目指してきました。
都市部でも、地方でも、育児中でも、仕事と両立しながらでも。学びたい人の背中を、そっと支える場所を。
豊かな知識、先駆者の経験知、終末期ケア専門士にならないと出会えなかった講師や気づきがある。

自分の中に眠っていた、ワクワクを呼び起こす学びは、生きる力になるのです。

終末期ケアは、医療だけでは成立しない

ケアの問題は、ACPの妥当性や安楽死など、社会背景や文化から表面化する問いもあります。
だからこそ、日本終末期ケア協会では「医療だけにとどまらない、包括的な学び」を大切にしています。

そして2025年、第6回 終末期ケア専門士認定試験に向けて新たな挑戦をはじめています。
「マニュアルにとらわれない学び」「多職種がフラットに語り合える場」。
常にアップデートしながら、“学びの循環”をつくり続けています。

「支援するあなたをひとりにしない」

この協会は、ひとりの看護師が「現場で困っている人がいるはず」という思いから生まれました。

そして今、その思いに共鳴する仲間たちが、全国に広がっています。

私たちは、これからも「終末期ケア」を支えるすべての人に、学びの場と心のつながりを届けていきます。

 

【終末期ケア専門士】について

「終末期ケア」はもっと自由になれる|日本終末期ケア協会

終末期ケアを継続して学ぶ場は決して多くありません。

これからは医療・介護・多分野で『最後まで生きる』を支援する取り組みが必要です。

時代によって変化していく終末期ケア。その中で、変わるものと変わらないもの。終末期ケアにこそ、継続した学びが不可欠です。

 

「終末期ケア専門士」は臨床ケアにおけるスペシャリストです。

エビデンスに基づいた終末期ケアを学び、全人的ケアの担い手として、臨床での活躍が期待される専門士を目指します。

終末期ケア、緩和ケアのスキルアップを考えている方は、ぜひ受験をご検討ください。