映画『ナースコール』を考察する―没入感と当事者意識
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第98回 アカデミー賞国際長編映画賞ショートリスト選出。
現在公開中の映画【ナースコール】を観てきました。
外科病棟で働くプロ意識の高いベテラン看護師のとある1日。ただでさえ、激務のフルコースが予測される日。病欠で1人が欠勤に。
そんなよくある看護師の日常をまるで一緒に働いているかのように没入させてくれる映画です。
看護師の方はもちろん、医療関係ではない方にもみてほしいです。
臨場感ある看護師の葛藤、人材不足のリアル

わたしは外来、病棟、訪問看護で約17年間、急性期から終末期まで多様な現場を経験してきました。
看護師という仕事は、その日の勤務人数に合わせて仕事をコントロールできません。やるしかない、どうやり抜くか、それを毎日突きつけられる過酷な世界で、〝マルチタスク”どころではない。今この瞬間にやろうとしていたことがナースコールで制止される。行動を制止されるなか、割り込みタスクがどんどん入ってくる。瞬発力を持って対処し続ける。そんな看護のリアリティを臨場感をもって訴えかける映像でした。
この映画は、どの世界でも起きている看護師の現実を描いたドキュメンタリーです。多くの観客には非日常にみえても、現場で働く看護師にとっては日常の光景。
特に、看護師の心理的描写が印象的でした。患者と2人きりのエレベーターの空気、ひとりになったほんの数秒で気持ちを切り替える様子、急変時の動揺、患者からのプレッシャー。まさに、息つく暇もない。
いま、医療体制、人材不足がもたらす影は、世界中の看護師を圧迫させています。
社会は、看護師に献身さと奉仕を過剰に求めてはいないでしょうか。
看護師という仕事の価値

この映画では看護師という専門職の確かな光にも焦点を当てています。
忙殺される日常の隙間に、患者のストーリーに触れる瞬間がある。
認知症高齢者へのケアのシーンも、主人公が機転を利かす。
そして、確かな知識と医療手技が、自分自身の武器にもなっていく。
チームメンバーもその日ごとに変化する。周囲環境が変化するなか、苦労を分かち合い、助けてくれるのもまたチームメンバーです。情報共有と意見交換を交わしながらも、メンバーへのリスペクトも忘れていません。
この映画のメンバーは、それぞれがプロフェッショナルだと感じました。
気持ちのいいコミュニケーションで、苦境の中にあってもお互いへの気遣いは忘れません。
“2030年には、世界で看護師が1,300万人不足する”

映画の最後に出てくる看護師をめぐる世界的課題。
たった4年後のこと。今もすでに現場は圧倒的な看護師不足となっています。
この状況は、映画を観ている一人ひとりが作り上げている。
私にできることは何か。これからの医療はどうあるべきか。
それぞれの立場で直ちに考察すべき問題です。
機会があればぜひご鑑賞ください。
日本終末期ケア協会代表理事
看護師
岩谷真意
【終末期ケア専門士】について

終末期ケアを継続して学ぶ場は決して多くありません。
これからは医療・介護・多分野で『最後まで生きる』を支援する取り組みが必要です。
時代によって変化していく終末期ケア。その中で、変わるものと変わらないもの。終末期ケアにこそ、継続した学びが不可欠です。
「終末期ケア専門士」は臨床ケアにおけるスペシャリストです。
エビデンスに基づいた終末期ケアを学び、全人的ケアの担い手として、臨床での活躍が期待される専門士を目指します。
終末期ケア、緩和ケアのスキルアップを考えている方は、ぜひ受験をご検討ください。