終末期ケアにおける意思決定支援~主治医からの説明と同意の重要性~|一般社団法人日本終末期ケア協会

終末期ケアにおける意思決定支援~主治医からの説明と同意の重要性~

2021.8.10 JTCAゼミ

目次

終末期ケアにおいて、患者はどこでどのように過ごしたいのか、どのような最期を迎えたいのかなどを考えることが求められます。

また、終末期になると医療者はバッドニュース(悪い知らせ)を伝えることは避けて通れません。

終末期ケアに携わる介護・医療職として、患者・家族をどう支援すればよいのか、そして誰がどのように伝えていけばよいのか、様々な選択に伴う倫理的課題が多い時期の意思決定支援の一つとしてバッドニュースを伝えるときの医療者が知っておくべきことについて考えていきたいと思います。

 

インフォームド・コンセントと意思決定

 

インフォームド・コンセント(以下、I.C)とは、『医師による情報開示や病状や治療についての説明が行われ、それに患者が同意すること』を意味しており、患者自身の主体的な意思決定が核となります。

平成26年の厚生労働省の調査によると、人生の最終段階における治療方針を定めることを希望する相手として、医師は「家族等のうち、自分のことを一番よくわかっている一人の方」と回答した人の割合が50.3%と医療者のなかで最も高く、この結果から患者・家族にとってバッドニュースを伝えてほしい相手は『医師=主治医』ということが推察できます。

それでは、どのようにバッドニュースを伝えていけばよいのでしょうか。

 

 

バッドニュースの伝え方とコミュニケーション

バッドニュースとは「患者の将来への見通しを根底から否定的に変えてしまう知らせ」と定義されています。

医療者からバッドニュースを伝えられた患者は、がん診断を受けたときと同じ衝撃を受けるといわれています。

バッドニュースを伝えられた際の一時的な心理反応は、正常な反応であると考えられています。

しかし、バッドニュースの伝え方“そのもの”が、患者の不安やストレスに関与していることはあまり知られていません。実は、患者は伝えられる内容だけでなく、伝えられた後の気持ちへの配慮を望む傾向にあることが示唆されているのです。

私たちは、バッドニュースの『事実』そのものを変えることはできません。また、患者や家族の心理的な衝撃をゼロにすることもできません。

それでも、伝える側の意識や行動を少し変え、心を寄せて配慮することで患者や家族が救われる場面はたくさんあります。

そこで、バッドニュースの伝え方のコミュニケーションスキルとして代表的な『SHARE』を紹介します。

 

<SHARE>

Supportive environment(支持的な環境)

・十分な時間とプライバシーが保たれた落ち着いた環境を設定する

・面談が中断しないように配慮する

・家族の同席を勧める

How to deliver the bad news(悪い知らせの伝え方)

・正直に、分かりやすく、丁寧に伝える

・患者の納得が得られるように説明をする

・言葉は注意深く選択し、適切に婉曲的な表現を用いる

・質問を促し、その質問に答える

Additional information(付加的な情報)

・今後の治療方針を話し合う

・患者個人の日常生活への病気の影響について話し合う

・患者が相談や気がかりを話すよう促し、希望があれば代替療法やセカンド・オピニオン、余命などの話題を取り上げる

Reassurance and Emotional support(安心感と情緒的サポート)

・優しさと思いやりを示す

・患者に感情表出を促し、患者が感情を表出したら受け止める

・家族に対しても患者同様配慮する

・患者の希望を維持する

・「一緒に取り組みましょう。」と声かけをする

 

 

終末期ケアは、患者も、医療者も、孤独にしてはいけない

 

終末期ケアでは、患者の状態が刻一刻と変化することが少なくありません。病状説明や治療に関しての説明は、多くの場合、主治医に委ねられていると思います。

しかし、日々の状態の変化や急変時の家族への説明は、介護・看護・医療の専門職にも求められる時代となっています。

医師だけでなく、その他の職種のスタッフにもこのコミュニケーションスキルは必要です。また、バッドニュースは伝えられた患者や家族だけが苦しい思いをするのではありません。バッドニュースを伝える側にも大きなストレスが生じるのです。

バッドニュースを伝えるということは、相手が傷ついたり、悲しい思いをしたりすることが懸念されます。それが予測できる上で伝えるということは、医療の場面に関わらず、伝える側も同じ苦悩を抱える作業となるのです。

患者や家族のケアはもちろんのこと、伝える側のスタッフを周りのスタッフがサポートし、孤独にならないよう、尊重し合えるチームが終末期ケアには大切です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【参考文献】

・大学病院の緩和ケアを考える会編集:臨床緩和ケア第3版,青梅社,2013

・内富庸介:患者に悪いニュースを伝える方法―精神腫瘍学的アプローチ―,岡山大学大学院精神神経病態学,2014

・濱口恵子,小迫冨美恵:一般病棟でもできる!がん患者の看取りケア改訂版,日本看護協会出版会,2015