患者・家族による新しい緩和ケアの質の評価~IPOS~について
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みなさんは「IPOS(Integrated Palliative care Outcome Scale)」(以下、IPOS)という言葉を聞いたことがありますか?
「STAS-J(Support Team Assessment Schedule-Japanese version)」(以下、STAS-J)を実際の臨床で活用している方が多いと思います。IPOSは、簡単に言うとSTAS-Jの後継版です。
これまでのSTAS-Jは、医療者側が患者の苦痛症状を評価するものでした。
しかし、最近の世界的な動向では〝患者目線での評価が必要である″と考えられ、その結果IPOSは誕生しました。
これは、患者・家族の心身の状況やチームケアの機能を確認し、現在提供しているケアの質を評価するためのツールとして活用することが広がってきています。
ここでは、IPOSの特徴についてご紹介していきます。
<特徴1> 原則は患者が評価する
IPOSには専用の質問用紙があります。
患者版質問票では、「最近の3日間」の身体や心の様子について、下記の10項目の質問に対して「0~4ないし評価不能」の5段階で回答することとなっています。
各項目の内容
Q1.この3日間、主に大変だったことや気がかりは何でしたか?
Q2.身体的症状の項目
(疼痛、呼吸困難感、倦怠感、嘔気、嘔吐、食欲不振、便秘、口渇、眠気、動きにくさ)
Q3.患者の不安や心配について
Q4.家族の不安や心配について
Q5.患者の気分の落ち込みについて
Q6.患者の気持ちの穏やかさについて
Q7.患者の気持ちに関する家族や友人の理解
Q8.患者の治療や疾患に対する説明について
Q9.病気のために生じた気がかりなことへの対応
Q10.どのようにしてこの質問票に答えましたか?
最後に合計スコアを計算します。Q1とQ10を除いて、合計スコアは全部で17項目0~68点の範囲になります。例えば昏睡状態などで「評価不能」の項目がある場合は、スコアの算出ができません。
<特徴2> 患者自身での評価が困難である場合は医療スタッフがスタッフ版で評価する
患者さんの状態が悪く、持続的鎮静中や昏睡状態などのときはスタッフ版を使用して医療スタッフが評価します。この医療スタッフというのは、患者さんに関わっている人であれば、どの職種でも構いません。個人でもスタッフで話し合ってでもどちらでも可能です。
<特徴3> スコアが「0」になることを目指すためのものではない
全項目において、スコアの理想は「0」なのですが、IPOSではスコアが0になることを目指すことよりも患者さんやご家族が現在どのような状況なのかを医療スタッフが把握し、継続してモニタリングすることの方が重要です。
また、患者さんの全身状態が悪化するにつれて、スコアが上がってしまい評価が下がるのは目に見えています。
IPOSは、その時々で患者さんの状態をアセスメントし、医療・看護が適切なケアを提供するための指標として、使用されます。
使用にあたっての注意点!
- 使用するための登録が必要。(King’s College, Cicely Saunders Institute POSのHP)
- 使用する際は、通常業務への負担を考慮し、小規模から開始する。
- 現時点では、がん患者指導管理料2の基準として使用できない。
おわりに
私たちのケアが患者さんやご家族にとって満足なものなのかどうかを主観的・客観的に評価することは難しいことだと思います。
今後、IPOSは患者さんが緩和ケアの質を評価するためのツールとして広まっていくことでしょう。しかしながら、患者さんやご家族にとって、質問票には書けない、言葉にできない思いや気持ちがあるのもまた事実だと思います。
終末期ケアに携わる私たちは、そんな患者さんやご家族の生の声に耳を傾けることも忘れてはなりません。