家族ケアとは
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どこまでが家族?
家族に普遍的な定義はなく、法律的には婚姻契約が基本となるし、社会的には同居や家計が重要な要素になります。
ただ、法律上の家族の定義と、家族ケアにおける家族の捉え方は少し違っています。家族看護の研究者たちの定義に共通することとして、情緒的なつながりや家族であるという認識を自分自身でもっていることがあり、家族とは「家族だと、その人が信じているものが家族である」といえます。つまり、血縁関係や戸籍上の関係よりも、情緒的なつながりをもってお互いに家族だと感じることができている関係性が“家族”であるという考え方です。
家族の健康とは
WHOは「家族の健康とは、健康の促進に関与する第一次的な集団としての家族の機能状態を意味する」と定義しています。
家族は、家族成員が健康問題をもつことによってさまざまな影響を受ける人であると同時に、家族の健康の維持増進に大きな力を発揮するケアの提供者でもあります。たとえば、家族のリーダー的存在である父親が病で倒れたとき、家族の中に様々な問題が発生します。家族成員の役割の変化だけでなく、父親のサポートという今までになかった役割もはいってくるのです。家族の生活や関係性は大きく変化します。
家族はお互いに影響し合う
家族は、ただ単に人の集まりではなく、家族間には関係性があり、相互作用があり、互いに影響し合います。
家族は常に揺れ動くモビールに例えられます。ある一つの部分が揺れるとその揺れはモビール全体に波及しますが、安定を取り戻そうとして、やがてバランスを保つようになります。例えば家族メンバーの1人が全人的苦痛を体験して大きく揺れ動くと、他のメンバーは何とかして緩和できないものかと考えて一緒に揺れ動くことになります。痛みが緩和され笑顔が戻れば家族も安定を取り戻し笑顔になります。
家族は強い!
家族の苦悩や家族の抱える問題にばかり着目していると、家族のもつ強みには気づかないかもしれません。しかし家族は、これまで発達課題を達成し、さまざまな危機にも対処し、苦難の中で学び成長してきた強みをもっています。家族にはそれぞれ歴史があるのです。家族の歴史にも目を向けて家族の持っている力に目を向けることが大切です。
緩和ケアにおける家族ケア
緩和ケアが開始されるとまず患者の全人的苦痛に対するケアを重点的に行います。その後徐々に苦痛が緩和され、時間とともに患者の状態が重篤になると、見ている家族の苦痛が増大するため、家族へのケアが重要となります。
予期悲嘆へのケア
患者の死を予期した時点から、患者や家族は離別の悲しみや嘆きを先取りします。この期間は、患者の死を受け止めるための心の準備期間といえます。この時期に十分に悲嘆を表現できると、患者は自己実現を成し遂げ人間的に成長することができ、家族は患者の死後、悲嘆からの回復が早いといわれています。
そのため、予期悲嘆を十分表現できるように援助することが重要です。よくご家族は「一番本人がつらいときに泣いていたら駄目ね」「わたしがしっかりとしなくちゃ」と思い、自分の感情を胸にしまって病気になった家族のケアをしています。予期悲嘆のケアの一歩目は「感情を表出を促すこと」です。泣きたいときには泣いてもいい、つらい気持ちを話してもいい、そんな信頼関係と環境を整えることがとても大切です。