遺される子供たちへのケア①
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親の死の経過がわからないと、子供の不安は増す
緩和ケア病棟でもAYA世代の方の入院が増えてきている。それに伴い、ご本人へのケアだけでなく、家族ケアにおいても医療者の役割は大きくなっている。そんな中で多くの医療者が「大切な人を亡くす子どもへのケア」について戸惑いを感じているのではないだろうか。
医療職者の中にはAYA世代の患者と同年代の方も多く、同じ子を持つ母親・父親として感情を大きく揺さぶられる場面もあるだろう。
親は、「不安になることは伝えたくない」「死ぬと分かるとかわいそうだ」と子供にバッドニュースを知らせることをためらうことも多い。親でさえ直面しがたい現実から子供を遠ざけることで保護しようという考えは親として当然の心理反応である。
しかし、実は、親の差し迫った死の経過について子供に話さないことで、子供の不安は増強すると言われている。親の死にゆく過程を知っているか、そこに適切なフォローがあったか、それが死別後に子供が抱える悲嘆に大きな影響を与える可能性がある。
まずは、子供に話す前の準備として、大人へのサポートをしっかりと行う。家族の死をどう受け止めているか、子供の様子を見てどう感じているか、子供へ伝えることをどう考えているか、キーパーソンが疲弊していないか、など話をしながら、医療者もみんなでサポートしていくことを伝える。そのうえで、家族の心配事は何か、子供は何を知りたいと思っているか、誰がいつどのように伝えるか、家族の思いに寄り添いながら話し合いすることが大切である。
子どもにとっての死の概念
医療者は、子供がどのように死の概念を獲得していくのかを理解しておく必要がある。
杉本の研究によると、死の概念の理解は6~8歳でほぼ獲得されるとある1)。死の概念とは、①死んだら二度と生き返らない、②死によってすべての思考や動作、感情などが止まる、③生きているものはすべていつか死ぬ、④死には様々な要因がある、を指す。④は子供にとっては理解できない場合もあるが、小学校低学年では「死とは何か」という概念を獲得しているといえる。
また、死の理解と反応は子供の発達段階に応じて異なる。そのため、子供の年齢や発達段階に応じた説明やケアが必要となる。また、子供の性格、病気である親との関係性、病状の経過、家族の状況、親戚との関係性などによっても影響を受ける。一般的な発達段階とともに、一人一人の状況も加味して個別に対応していくことが大切である。
参考文献
1)杉本陽子:子どもの「生と死」に対する認識,日本健康医学会雑誌,Vol.10, No.1