「その痛み、本当に“いつもの対応”でよかったのか──現場の声から見えた“真の痛みのアセスメント”」
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2026年1月15日(木) 学びLabo
「その痛み、いつもの対応で大丈夫ですか?~真の痛みのアセスメントに強くなる~」
を開催しました。
講師
ともクリニック院長
許 智栄(ホ・ヂヨン) 先生

「高齢者だから仕方ない」と思っていなかっただろうか
今回の学びLaboは、「高齢者の痛み」をテーマに、
日々の現場で“見慣れてしまっている痛み”に、改めて立ち止まる時間となりました。
参加者からは、
「高齢者の痛みは年のせい、と無意識に受け止めていた自分に気づいた」
「“いつも痛いと言う人”への対応が惰性になっていた」
といった声が多く見られました。
講義中の資料でも示されたように、
高齢者の多くが慢性的な痛みを抱えながら生活しており、
“痛みがあること自体が異常ではない”環境に、
私たち支援者側が慣れてしまう危険性が指摘されました。
「痛みを測る」だけでは足りなかったという気づき
セミナーで繰り返し強調されたのが、
NRSなどの数値評価だけでは、痛みの本質は見えてこないという点です。
OPQRSTを基本にしながらも、
本当にいつから始まった痛みなのか
動いたとき、触れたとき、表情や呼吸はどう変わるのか
その人の“いつも”と比べて、何が違うのか
といった総合的な視点(Beyond OPQRST)の重要性が共有されました。
「痛みの評価は“聞くこと”だけでなく、“観ること”だと学んだ」
「呼吸数が、痛みのサインになるという視点は目から鱗だった」
といった学びの声が多く寄せられています。
現場の困り事 「訴えが曖昧」「評価が難しい」
参加者から、現場での悩みとして次のような声が目立ちました。
「認知症があると、訴えの信ぴょう性に迷ってしまう」
「痛みの場所が毎回違い、どう判断してよいかわからない」
「とりあえず頓用で様子を見る対応になってしまう」
許先生は講義の中で、
「訴えが曖昧でも、痛みがないとは限らない」
「動かないのは“楽だから”ではなく、“痛みへの防御反応”かもしれない」
と語られました。
この言葉に、
「“動けない=年のせい”と決めつけていたかもしれない」
「Freeze(動かない状態)に騙されてはいけない、という言葉が強く残った」
という共感の声が多く集まりました。

5Mという“整理の軸”が、迷いを減らしてくれた
今回のセミナーで、多くの参加者が「現場で使える」と感じたのが
老年医学の基本である「5M」の視点です。
Mind(認知・せん妄・気分)
Mobility(動作・転倒・ADL)
Multimorbidity(複数疾患)
Medication(薬剤・副作用)
Matters Most(その人が何を大切にしているか)
「評価に迷ったとき、5Mに立ち返れば整理できると感じた」
「“ゴールは人それぞれ”という前提に立てたことで、気持ちが楽になった」
という声から、
“正解を出す”ためではなく、
“考え続けるための枠組み”として5Mが受け取られていることがうかがえました。
「悩みながら関わること自体がケア」
参加者からは、こんな印象的な感想もありました。
「先生自身が悩みながら患者さんと向き合っている姿に救われた」
「迷っている時点で、その人を大切にしているという言葉に励まされた」
痛みのアセスメントに王道はない。
だからこそ、
患者さんに関心を持ち続けること
小さな違和感を大切にすること
多職種で情報を持ち寄ること
その一つひとつが、終末期ケアにおける“確かな支え”になる
そんなメッセージが、参加者の心に深く残るセミナーとなりました。
おわりに―「その痛み」に、もう一度立ち止まる
今回の学びLaboは、
「いつもの対応」を否定するための時間ではなく、
「本当にこの人に届いているか」を問い直す学びでした。
痛みをゼロにすることがゴールではなく、
その人にとって何が大切かを探り続けること。
日本終末期ケア協会は、
現場で悩みながらも向き合い続ける皆さんとともに、
これからも“本質的なケア”を学ぶ場を届けていきます。
【終末期ケア専門士】について

終末期ケアを継続して学ぶ場は決して多くありません。
これからは医療・介護・多分野で『最後まで生きる』を支援する取り組みが必要です。
時代によって変化していく終末期ケア。その中で、変わるものと変わらないもの。終末期ケアにこそ、継続した学びが不可欠です。
「終末期ケア専門士」は臨床ケアにおけるスペシャリストです。
エビデンスに基づいた終末期ケアを学び、全人的ケアの担い手として、臨床での活躍が期待される専門士を目指します。
終末期ケア、緩和ケアのスキルアップを考えている方は、ぜひ受験をご検討ください。