急変時に多職種でどう判断を共有するか呼吸ケアと意思決定が求められる場面での考え方
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はじめに
患者さんの状態が急変したとき、
「今、何を優先すべきか」
「この対応は本当に患者さんのためになっているのか」
と、判断に迷う場面は少なくありません。
とくに呼吸ケアやリハビリテーションが関わる場面では、
職種間で意見が分かれ、対応に戸惑った経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
本記事では、
日本終末期ケア協会主催オンラインセミナー「学びLabo」で実際に寄せられた質問に対し、
理学療法士・秋保光利先生が後日あらためて回答してくださった内容を、
解釈や要約を加えず、そのまま掲載します。
今回の回答について
本記事は、
セミナーに寄せられた質問に対し、
理学療法士・秋保光利先生が後日あらためて回答してくださった内容をもとに構成しています。
急変時の対応や多職種連携、意思決定の問題は、
特定の疾患や場面に限らず、多くの医療現場で共通する課題です。
ご注意
本記事で紹介する内容は、考え方や視点の共有を目的としたものです。
実際の対応にあたっては、
患者さんの状態や医師の指示、所属施設・地域のルールを踏まえて判断してください。
質問①
PTです。
急変時、他職種で意見を一致させていく難しさを感じています。
肺炎から敗血症になってしまったケースなのですが、
看護師からは「呼吸リハ中止!」、
医師からは「呼吸リハしてあげてくれ!」と言われていました。
今思えばカンファレンスをすべきだったのではないかと感じています。
急変した場合、話し合う時間も限られると思ったのですが、
急変した場合の治療方針や緩和ケア方針はいつ話し合うのがベストなのでしょうか。
回答
このご質問は非常に重要な視点です。
ご自身のお勤めになっている病院もしくは施設などの環境もありますでしょうし、
地域特性と言ったものも関係してくると思います。
また患者さんの状況もそれぞれだと思いますし、
その患者さんそしてその方の周りの方々の思いも関係するため、
この質問への返答は十人十色となるかと思います。
それを前提において私としては
後手に回らないような評価とプランを作成する。
患者自身が重要な決定に関われることが一番だと思います。
患者さんとその家族もしくはその方をお世話している方が
事前に話をしておくという環境を提供するのも医療者の重要な仕事だと思います。
これは医師がKey personになります。
まずは患者さんと家族が急変時にどうするかを、
患者さんの意思決定を聞くことができない状態になってから相談するのではなく、
事前に話をしておくことが望ましいかと思います。
とは言え、急変してしまってからの治療方針は
急変時対応が終わったらすぐに話をして軌道修正する方が良いと思います。
質問者の立場から考えると、
リハビリをやるorやらないで意見が食い違った場合、
まずPTとして患者の経過を改善させるすべがある場合は、根拠をもって説明しましょう。
また逆もしかりです。
やってはいけない根拠があるのであれば、やれないという選択をしましょう。
やらない理由を探すわけでありませんので、誤解しないでください。
どちらでもない、もしくは自分では判断できないのであれば、
意見の食い違っている職種たちと合同で、
病棟で立ち話でもいいから早々に方針を話すことをお薦めします。
以下は理想です。
ACP(アドバンス・ケア・プランニング)
患者本人とその大切な人(家族、親族など)と医療従事者(医師、看護など)も
参加して価値観共有の場を作っておく。
これは理想論です。
全員参加できなくても、
患者本人と医療者の意思決定援助の核となる方と価値共有をして、
それを関係者たちに伝達しておくことは必要だと思います。
カンファレンスのタイミング
入院前/入院時/訪問開始時/病状変化時/リハ開始時など、
何かしらの変化がある時 には話をするチャンスかと思います。
急変時と緩和ケアは別物と捉え、緩和ケアに関しては「軌道修正」をしていく
想定と現実のギャップを話す場としても有効かと思います。
それは必ず関係者全員で話し合いをする必要はないと思います。
その問題を解決するために必要なスタッフで話し合いをすることが必要かと思います。
とにかく「Key personへの相談から」が道のりとしては易しいでしょう。
Key person には「この患者さんの今後の経過はどうなるんですか?
リハビリの内容を考える上で参考にしたいので教えてください。
(経過を聞いて)その経過に関して患者さんは知っていますか?
患者さんとリハビリ内容を決めるときに経過のことを
話していいかわから なかったので確認しておきたくて。
(患者と相談していなさそうななら)今後の方針とかはどうなるんですかね?」
こんな感じで話してみても良いかもしれません。
あくまでもこれは私のやり方ですが。
質問②
NIVのみで終末期を迎えるALSの患者さんのリハビリやケア、
多職種での連携などのケースやエピソードはありますか?
回答
ALS 患者の終末期をNIVで迎えた経験はありません。
気管切開下人工呼吸とは違いますが、
呼吸管理方法が違うこと以外は同じことと思いますので、多職種連携が要となります。
私の考え
NIV のデバイス、インターフェースがどのようなものを使っているかわかりませんが、
デバイスが問題ないかは、関わる医療者が全員正しく評価できることが望ましいでしょう。
これは侵襲的人工呼吸管理でも同じですが。
また NIV のインターフェースの使用が正しくできているかは、
関わる全ての医療者、介護者、家族が同じレベルで管理できることが望ましいと思います。
意思決定も、それを伝える能力も NIV であれば自身の声で伝えることが可能なのかもしれません。
本人と家族が話して、何か「やりたい」こ とが医療者に伝えられたら、
最大限可能な範囲でかなえられることを行ってほしいと思います。
その時に力を発揮するのが多職種連携力だと思います。
多職種と言っても自分たちの周りにいる人たちだけでなく、
必要な人材を巻き込む能力だと思います。
講演時に私が話をさせていただいた、
スポットで1~2回だけなど訪問や相談を受けるというのも、多職種連携でしょう。
おわりに
急変時や終末期の場面では、正解が一つに定まらない判断を迫られることが多くあります。
だからこそ、
事前の話し合い、早めの共有、そして多職種での連携が、
患者さんにとっての最善を考える土台になります。
本記事で示された考え方は、
そうした場面で判断に迷ったときの一つの視点として共有されるものです。
本記事は、セミナーにおいて寄せられた質問に対し、
理学療法士・秋保光利先生が後日あらためて回答してくださった内容を、
内容を変更せず掲載しています。
【終末期ケア専門士】について

終末期ケアを継続して学ぶ場は決して多くありません。
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