緩和ケアにおける神経ブロックの意義とは~神経ブロックがもたらす効果と適応①~
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はじめに
がん患者さんを苦しめるおもな症状の一つに疼痛が挙げられます。
現在、がん性疼痛の治療は、世界保健機関(WHO)のがん疼痛治療ガイドラインによる薬物療法が基本として行われています。この方法により、70%~90%*1)の患者さんのがん性疼痛をコントロールすることが可能になりましたが、未だに10~30%の患者さんは薬物療法で鎮痛効果が十分に得られていない、副作用のために十分な薬剤投与ができないなど、疼痛のコントロールが十分とは言えないことが報告されています。
難治性になりやすい痛み
・脊髄への浸潤
・パンコースト腫瘍による腕神経叢浸潤
・骨盤内腫瘍による仙骨神経叢浸潤
・すい臓がんのすい実質の破壊による痛み
・広範な胸膜播種による胸部痛
・多発骨転移の体動時痛(特に溶骨性の変化の強いもの)
・会陰部の痛み
薬物療法以外の疼痛コントロール
薬物療法では治療困難な疼痛を難治性疼痛といい、薬物療法以外の疼痛コントロールが求められます。
薬物療法以外の疼痛コントロールとして
1.放射線療法
2.神経ブロック
があり、今回は神経ブロックについて取り上げていきたいと思います。
神経ブロックがもたらす効果と適応
神経ブロックがもたらす効果とは
神経ブロックは迅速な鎮痛効果を発揮することが、難治性疼痛に対して大きな利点となります。
・迅速な疼痛の軽減
・難治性の疼痛でも効果的に軽減できる
・数か月から1年程度の効果を得られる
・オピオイドの減量に繋がる
・オピオイドの減量に伴い、副作用である眠気や便秘などの症状が改善する
・疼痛に思考を支配されず、やりたいことができる
・疼痛軽減に伴う生活の質の向上
このように、疼痛によって日常生活動作が制限されていたり、趣味の時間を楽しめなかったり、外出などが出来なかった患者さんでも、疼痛が軽減することによりこれらが実現可能になり、生活の質の向上に繋がるのです。
神経ブロックの適応
では、どんな患者さんが適応なのでしょうか
1.医療用麻薬や鎮静補助薬の調整をしても十分な鎮痛効果が得られない場合
2.医療用麻薬や鎮痛補助薬の副作用が強く使用できない場合
3.比較的場所が限定された痛みの場合
4.腫瘍や骨転移が神経に浸潤して出現している疼痛の場合
など
これらは一つの指標として挙げましたが、適応の判断においては、がん性疼痛に対しての神経ブロック症例が非常に少なく、臨床医も判断に迷う場合が少なくないのが現状です。地域の基幹病院や緩和ケア、ペインクリニックなどの医師また看護師が連携をとり合うことが今後のより一層の発展には重要になってきます。
神経ブロックの適応疾患と方法
神経ブロックを行う主な部位と適応疾患

神経ブロックに用いる方法

神経ブロックは局所麻酔を使用する場合と、神経破壊薬を使用する場合がありますが、良性疾患に対しては、通常局所麻酔薬を使用することが多く、がん性疼痛に対しては効果の長い神経破壊薬が使用されることが多いようです。
参考文献
1)医療用麻薬適正使用ガイダンス 令和6年 最終閲覧日2025/6/12.
2)緩和ケアセンター山口大学医学部附属病院 難治性がん性疼痛に対する神経ブロックについて 最終閲覧日2025/6/12.
3)麻酔科 – 難治性がん性疼痛に対する神経ブロック等について 駒込病院 東京都立病院機構 最終閲覧日2025/6/12.
4)がんの痛みの治療 治療法について がん研有明病院 最終閲覧日2025/6/10.
5)がんの痛みを取り除く神経ブロック療法 がんサポート 株式会社QLife 最終閲覧日2025/6/12.
6)がん診療ガイドライン がん疼痛薬物療法 WHO方式がん疼痛治療法 日本癌治療学会 最終閲覧日2025/6/12.
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