緩和ケア病棟とホスピスは何が違うの?

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緩和ケア病棟とホスピス
終末期の患者さんに触れる機会があると、「緩和ケア病棟」や「ホスピス」などの言葉をよく耳にするのではないでしょうか。
緩和ケア病棟とホスピスってどう違うの?
そんな風に思ったことはありませんか? では、どんな特徴や違いがあるのか見ていきましょう。
緩和ケア病棟とは
緩和ケア病棟とは
緩和ケア病棟では、一般的に心身の辛さをコントロールしながら、出来る限り普段通りの生活を送れるようにケアを行っています。
緩和ケア病棟で行われるケア
緩和ケア病棟は、緩和ケアに特化した病棟です。たとえばがんであれば、がんを治すことを目標にするのではなく、がんの進行などに伴う身体的苦痛や精神的苦痛に対するケアを行います。
緩和ケア病棟は一般病棟とは違い、出来る限り日常生活に近い暮らしが出来るように、共用のキッチンが設けられていたり、季節のイベントが開催されたり、レクリエーションなども実施されています。また、家族や友人を招き、一緒に病棟内のイベントを楽しむことも出来ます。
ホスピスとは
ホスピスとは
ホスピスとは、死を目前にした患者さんの身体的苦痛や精神的苦痛を和らげる目的で作られた施設のことを言います。また、死期の近い患者さんとその家族の苦痛を最小限にすることを目的としたプログラムや概念を指すこともあります。
ホスピスで行われる治療やケア
ホスピスでは、病気を治すための治療やケアはしません。ただし、がんの患者さんが痛みを訴えることは多くありますが、そのような時には鎮痛剤などで痛みを取り除きます。また、ホスピスは自宅のような生活しやすい環境を提供し、レクリエーションなども実施しています。
緩和ケア病棟とホスピス 費用と在院日数
制度
・どちらも保険診療を行っています
・高額医療費制度により上限が適応されます
・差額ベッド代や食費は普通の病院と同じように別途発生します
医療の水準
・緩和ケア病棟もホスピスも緩和ケア医が必ずいるため、医療の水準に差はありません
平均在院日数
特定非営利活動法人日本ホスピス緩和ケア協会の2018年度調査
・緩和ケア病棟の平均29.6日
・ホスピス病棟の平均30日~45日
費用
厚生労働省から「緩和ケア病棟」の承認済みのホスピスに入院する場合の費用を含め医療費は定額です。
〈参考〉
1割負担の場合
・30日以内:約5,000円/日
・30日以上60日以内:約4,500円/日
・60日以上:約3,300円/日
3割負担の場合
・30日以内:約15,000円/日
・30日以上60日以内:約13,500円/日
・60日以上:約10,000円/日
30日以内 | 30日以上60日以内 | 60日以上 | |
1割負担の場合 | 約5,000円/日 | 約4,500円/日 | 約3,300円/日 |
3割負担の場合 | 約15,000円/日 | 約13,500円/日 | 約10,000円/日 |
上記のように、基本的に日本において緩和ケア病棟もホスピスも大きな違いはありません。 では、緩和ケア病棟とホスピスは全く一緒なのでしょうか?
緩和ケア病棟とホスピスの違い
大きく違う点は、
「宗教的なサービスの常設」
「ケアの時期」
「病院と施設」
の3つです。
宗教的なサービスの常設
緩和ケア病棟では、特定の宗教の活動はありません。しかし、緩和ケア病棟のチームの一員として僧侶やキリスト教・スピリチュアル関係の有資格者が活動している場合があります。
一方、ホスピスはキリスト教系の母体によって運営されており、病院付牧師が配置されていることも多く、牧師は週1回程度、あるいは求めに応じて病棟の入院患者の所を回ります。ホスピスに入ったからといってキリスト教の信仰を進められることや、料金を取られることもありませんし、巡回を望まないということも出来ます。
ケアの時期
緩和ケアもホスピスケアも同じように、身体的苦痛や精神的苦痛を緩和することを目的としていますが、緩和ケアは「診断直後のがん患者さんにも提供されるもの」で、ホスピスケアは「寿命が近づいている患者さんに提供されるもの」です。
病院と施設
緩和ケア病棟は病院に併設されていますが、ホスピスは病院に併設された病棟だけでなく、老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などでも提供されています。
緩和ケア病棟は、辛さをコントロールして普段通りの生活を送る病棟で、ホスピスも余命近い患者さんが、最後まで希望通りに生きる療養の場です。 緩和ケア病棟とホスピスで実施している治療やケアはほぼ同じであり、明確な線引きはされていません。
まとめ
緩和ケア病棟とホスピスの特徴や違いを見てきましたが、いかがでしたか?
緩和ケア病棟
・緩和ケアに特化した病棟
・がんと診断された直後から治療と並行してケアを提供する
・痛みやその他の症状を和らげ、生活の質を向上させるケア
ホスピス
・死を目前にした患者さんの身体的苦痛や精神的苦痛を和らげる場
・余命が近づいている患者さんに提供する「最後を快適に過ごすためのケア」
・キリスト教の牧師など、宗教的サービスの常設がある
※僧侶が常駐している緩和ケア病棟をビハーラ病棟または仏教ホスピスなどと呼ぶことがあります。
最後に
治療と並走していく緩和ケアは、診断直後から患者さんの身体的・精神的苦痛へのケアをしていきます。しかし、ホスピスは余命が近づいている患者さんが命尽きるまで自分らしく生きていくためのケアを提供する場ですので、「ホスピス=死」を強く連想し、敬遠される方もおられるのが現状です。緩和ケアも同じく、「緩和ケア=死」を連想される方は多いと思います。しかし、適切な緩和ケアやホスピスケアによって寿命が延びたというケースも報告されています。

現状ではどちらも需要を充分満たすほどの数はありませんが、着実に増えてきています。 それぞれの特色を知り患者さん一人一人に合った最期の場所を、患者さんが自由に選べるよう支援していきましょう。
ー 参考文献 ー
緩和病棟とホスピスの違い これを知っておくと良い所
早期緩和ケア大津秀一クリニック・早期からの緩和ケア外来
緩和ケア病棟とホスピスは何が違うのか?
つばさ在宅クリニック西船橋
ホスピスとは?緩和ケアと違い、日本でのホスピスの現状や費用
介護健康福祉のお役立ち通信
緩和ケアとホスピスに違いはあるの?対象となる患者や条件を解説
がんメディ
研究報告書【わが国の緩和ケア病棟における宗教家の活動の現状】
村瀬 正光
【終末期ケア専門士】について
終末期ケアを継続して学ぶ場は決して多くありません。
これからは医療・介護・多分野で『最後まで生きる』を支援する取り組みが必要です。
時代によって変化していく終末期ケア。その中で、変わるものと変わらないもの。終末期ケアにこそ、継続した学びが不可欠です。
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