神経難病ケアと終末期ケアの“本質”は同じ(1)|一般社団法人日本終末期ケア協会

神経難病ケアと終末期ケアの“本質”は同じ(1)

2020.4.1 JTCAゼミ

目次

神経難病の専門医療機関を訪問

終末期ケア専門士の公式テキストに執筆をしていただいた三方崇嗣先生にご協力いただき、千葉県にある独立行政法人国立病院機構下志津病院へ訪問させていただいた。終末期ケア専門士の公式テキストには「非がんの終末期ケア」も収録している。日本の終末期ケアは、がんを中心に長年発展してきたが、在宅ケアや終末期ケアを行っていくうえで、がん以外の疾患のケアを知ることは今後重要になってくると当協会は考えている。そこで、神経難病のケアを少しでも皆さんに届けたいと思い、施設見学をさせていただいた。
下志津病院は筋ジストロフィーの専門医療機関であり、筋ジストロフィーの病棟を有する全国27の旧国立療養所の1つである。50年にわたり一貫して筋疾患の臨床経験を重ねており、筋ジストロフィーの病態解明や合併症の研究を通じて生活の質の改善を目指している。日々、多くの職種の方がまさに一丸となって患者さんへのケアを実践している。






信じられない光景

まずは筋ジストロフィー病棟を見学させていただいた。私が抱いていた神経難病のイメージ、「寝たきりの方が多いのかな、意思疎通が取れる方は少ないかもしれないな」、そんなイメージを抱きながら病棟に到着。
そこには、長年総合病院で勤務してきた私にとっては信じられないような光景が広がっていた。
指しか動かすことのできない人工呼吸器をつけた人が自由に車椅子を操作して病棟内を行き来している。それだけではない。病院側が可能と判断した患者は、病棟外にも出ることもできる。そう、人工呼吸器をつけながら。病院前にあるショッピングモールへもボランティアの方と買い物に行くことができる。ネットをしたり、テレビを見たり、絵をかいたり、思い思いに「自分の時間」を過ごしている。こちらの声掛けにも、快く応じてくださる。目元を見ていれば、微笑んでくださったことがわかる。人の表情って目元に表れるのだなと実感した瞬間だった。
また、看護師は一人一人の患者の持ちうる身体機能を十分に把握しており、その人に応じた方法でコミュニケーションをとっている。
そう、ここは病院であり、生活の場。もちろん、一般病院もそうであるけれど、呼吸器が常時必要で指先しか動かせない患者が一般病院でこれほど自由に生活することは難しいだろう。